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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2002年度調査研究報告


■ホスピス・緩和ケア病棟のケアプログラム基準案作成と
 ホスピス・緩和ケア病棟看護職カリキュラム作成に関する報告<3P>


資料1

ホスピス・緩和ケア病棟のケアプログラム基準案

ホスピス・緩和ケアの基本的な考え方

 ホスピス・緩和ケア病棟は、治癒不可能な疾患の終末期にある患者および家族のクォリティー・オブ・ライフの向上のために、様々な専門家が協力して作ったチームによって行われるケアを意味する。そのケアは、患者と家族が可能な限り人間らしく快適な生活を送れるように提供される。ケアの要件は、以下の5項目である。

[1] 人が生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れる「死への過程」に敬意をはらう。
[2] 死を早めることも死を遅らせることもしない。
[3] 痛みやその他の不快な身体症状を緩和する。
[4] 精神的、社会的な援助を行い、患者に死が訪れるまで、生きていることに意味を見出せるようなケア(霊的ケア)を行う。
[5] 家族が困難を抱えて、それに対処しようとする時、患者の療養中から死別したあとまで患者を支える。

ホスピス・緩和ケア病棟で対象とする患者は次の通りである。

[1] 医師が治癒を望めないと判断した悪性腫瘍またはエイズの患者を対象とする。
[2] 患者と家族または、その何れかが入院を希望していることが原則である
[3] 入院時に患者が病名・病状について理解していることがのぞましい。理解していないときには、患者の求めに応じて、適切な病名・病状の説明がなされる。
[4] 上記以外の理由で受け入れを差別してはならない。

ホスピス・緩和ケアの基本

[1] いかなる場合にも、患者の意思を尊重したケアを行う。
[2] ケアはすべての人に平等に提供する。
[3] コミュニケーションに障害のある人などすべての人とのコミュニケーションが取れるように配慮する。
[4] ホスピス・緩和ケアに携わる人々は、多職種によるチームによりケアを行うということを認識して治療、ケアをする。
[5] 患者、家族は、チームの中心である。
[6] 病棟の運営方針・運営計画は、提供するすべての医療、看護、チームの体制、病棟で働く職員、ボランティアの教育について立てる。
[7] ホスピス・緩和ケア病棟の承認施設のメンバーとして、他の施設と協力する。
[8] 職員、ボランティアは、いつも礼儀正しく、親切に、思いやりのある態度で患者・家族に接する。
[9] 職員、ボランティアは、患者に初めて接する時には、患者やその家族に自分の名前、役割を自己紹介する。
[10] 患者、家族に関する守秘義務を守る。
[11] 面談や、診察は、患者のプライバシーが守られるように配慮する。

申し込みのための情報提供

[1] ホスピス・緩和ケアを希望する患者・家族に、施設、医療サービスについての情報を提供する。
[2] 受診、入院に関する相談の窓口、担当者を明らかにし、いつでも相談に応じる。

環境・設備

[1] 患者・家族にとって心地よく過ごせる環境を整備する
[2] 病棟内の設備は、患者が安全に、安楽に使用できるように整備する。

外来診療、地域との連携

[1] 外来患者は、ホスピス・緩和ケアの専門外来においてケアを行う。
[2] 自宅療養している患者のための支援体制をとる。

チームの体制

[1] ホスピス・緩和ケアに携わる人々は、チームによりケアを行うという認識が重要である。
[2] 緩和ケアの医師は、外来、入院患者の診療に携わるのに十分な人員を配置する。
[3] 看護師は、患者が必要としていることを満たすためと、継続的に安全なケアを実施するための人数と技術を合わせて考慮した人員がいる。
[4] ボランティアはチームの一員であり、ケアの提供者である。

インフォームドコンセント

[1] 医師は、患者に、診断、治療、予測される結果について理解できるように十分説明し情報を提供しなければならない。
[2] 提供されるケアや治療については、適切なインフォームドコンセントを行い、いかなる危険や利益も患者に説明した上で行なう。
[3] 治験や臨床研究を行う場合は、必ず、チーム内で、緩和ケアの理念に基づいて、目的、患者・家族に及ぼす影響、倫理的側面等から検討する。
[4] 医師は、患者が、希望すればセカンドオピニオンを受けることができるよう協力する。
[5] コミュニケーションに障害のある人などすべての人とのコミュニケーションが取れるように配慮する。
[6] 患者についての情報を患者以外に提供する時は、患者の許可を得なければならない。
[7] 患者に求められれば、診療記録、検査データーなど診療情報について開示しなければならない。

ケアの実施

ケアのプロセス

[1] 入院した患者には、ただちに適切な対応をする.
[2] 多職種チームでケア計画を立案し共有する。
[3] ケア計画を、適切に見直す。
[4] 患者の担当者が誰であるか患者が理解できるようにする。
[5] 患者または家族の意思を尊重した多職種チームによる計画に基づいて退院の準備を行う。
[6] 患者とその家族に退院後の支援についての情報を提供する。
[7] 自宅で死を迎えたい患者・家族のために退院後の支援を調整する。
[8] 退院後、ケアのサマリーを,訪問する医師、看護師等、連携するサービスの責任者に速やかに送る。
[9] 死亡時は、家族の気持を配慮し、敬虔な態度で対応する。
[10] 死亡確認、死亡診断書の取り扱い、事務手続きを適切に行う。
[11] 死亡退院する家族に死別後のケアのプログラムの利用法について情報提供する。

患者の身体的、心理的、社会的、霊的(スピリチュアル)ニーズへの対応

   1. 身体的ニーズへ対応
[1] アセスメント:多職種チームのメンバーがニーズをアセスメントし,継続した評価を行う。
[2] 計画とケアの提供:多職種によるアセスメントに基づいた適切なケア計画を立て、ケアを提供する。
[3] 結果の評価:身体的ニーズへの対応を評価し、適切な見直しを行う。

   2. 心理的ニーズへの対応
[1] アセスメント:多職種チームのメンバーがニーズをアセスメントし、継続した評価を行う。
[2] 計画とケアの提供:多職種によるアセスメントに基づいた適切なケア計画を立て、ケアを提供する。
[3] 結果の評価:心理的ニーズへの対応を評価し、適切な見直しを行う。

   3. 社会的ニーズへの対応
[1] アセスメント:多職種チームのメンバーが患者の重要な社会的ニーズをアセスメントし、継続した評価を行う。
[2] 計画とケアの提供:多職種によるアセスメントに基づいた適切な計画を立て、実施する。
[3] 結果の評価:社会的なニーズへの対応を評価し、適切な見直しを行う。

   4. 霊的(スピリチュアル)ニーズへの対応
[1] アセスメント:スピリチュアル ニーズをアセスメントし、継続した評価を行う。
[2] 計画とケアの提供:アセスメントに基づいた適切なケア計画を立て、ケアの提供を行う。
[3] 結果の評価:スピリチュアルニーズへの対応を評価し、適切な見直しを行う。

ケアの質の改善

[1] 患者の診療に関する記録は、誰もが読める字で正確に書く。
[2] 病棟管理全般についての評価を定期的に行う。
[3] 患者・家族の満足度は定期的、系統的に調べる。
[4] 苦情へ対応する体制を整える。
[5] 病院幹部や、病棟の責任者は、スタッフを支え、仕事への満足度をあげるシステムを確立させる。
[6] 病院幹部や病棟の指導者は、スタッフのストレスが蓄積しないような職場環境に配慮する。

患者の安全の確保

[1] 患者の安全を守るために次のことを守る。
1)医療事故対策に関するマニュアルがあり、それに基づいて、病棟内での事故やインシデントについて報告し対策を検討する。
[2] 麻薬、向精神薬を含む薬剤に関しては、管理規程にもとづいて管理する。
[3] 医師は薬の処方箋や指示表は、定められた規則に沿って書く。
[4] 感染管理規程に基づいて感染予防に努める。
[5] 病棟職員、ボランティアは、患者、家族とのトラブル(危険な行為や嫌がらせ)に対応できるようにしておく。
[6] 救急時の対応は、マニュアルがあり、手順にそって対応する。

職員の教育プログラム

[1] 教育、研究を行うための体制を整える。
[2] 新採用者のための教育プログラムをもつ。
[3] 専門職チームメンバーは、専門性を継続的に高める体制を整える。
[4] 指導的役割を果たすスタッフ(緩和ケアを専門にする医師、認定看護師など)をホスピス・緩和ケア病棟に配置し、そのスタッフの能力も高めるよう配慮する。
[5] 教育と研究を評価し、実践に組み込む。
[6] ホスピス・緩和ケアに携わるスタッフを対象として適切な教育プログラムを提供する。
[7] 施設内外のスタッフを対象として研修の場を提供する。
  (継続検討中)


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