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(2011年7月1日~)
事業報告
2022年度 第23期事業報告書     (自:2022年4月1日 至:2023年3月31日)



[ご挨拶]

 平素より、ホスピス財団へのご理解とご支援を賜り、厚く感謝申し上げます。この度、『第23期(2022年4月1日~2023年3月31日)事業報告書』が完成しましたのでお届けいたします。
 これからも公益財団法人として、ホスピス・緩和ケアの質の向上と、その普及・啓発に貢献することを願いつつ、事業活動を続けていく所存です。引き続き財団へのご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ながら、皆様のますますのご発展をお祈り申し上げます。

2023年5月
(公財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
事業委員会・委員長  恒藤 暁


【事業報告】

            
   
〔ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業〕
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
(第 5 次調査・1 年目)
3.  『ホスピス・緩和ケア白書 2023』(特集テーマの概説+データブック)
作成・刊行事業
4.  救急・集中治療における緩和ケアの推進 4年目(最終年度
5.  ホスピス・緩和ケアに関する意識調査(第5回目)
〔ホスピス・緩和ケア人材養成事業〕
6.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
 7.  『Whole Person Care 理論編』発行事業
 8.  「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 9.  緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした意思決定支援に関する研修セミナーの開催ラム創生事業
〔ホスピス・緩和ケアに関する普及、啓発事業〕
10.  一般広報活動事業
11.  『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷
〔ホスピス・緩和ケアに関する国際交流事業〕
12.  International Congress on Palliative Care 参加
13.  ホスピス財団 第5 回 国際セミナー開催事業(Web)
14.  APHN関連事業
15.  日本・韓国・台湾・香港・シンガポール・インドネシア 第4期共同研究事業
(3年計画の1年目)



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)

2022年度の多施設共同研究として公募申請された7件について、事業委員会において審査した結果、次の2件が採択された。(公募制度18年目)
 (1)進行がん患者とその家族を対象とした Serious Illness Care Program - Family の混合研究法による
     実施可能性の検証・・・諸事情により次年度へ延期となった。
 (2)性的マイノリティに対する緩和ケアのあり方に関する研究 実施済

なお、2021 年度に採択されたが延期となった「メサドンによる難治性がん疼痛治療に関する多施設共同前向き観察試験 次年度に再延期された。
また、2020 年度に採択された「苦痛緩和のための鎮静に関する法律上の問題に関する研究 は新型コロナウイルス感染症の影響で、さらに次年度へ延期となった。




2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第5次調査・1年目)

 遺族によるケアの質の評価に関する研究(J-HOPE5:以下、第 5 次調査)は、2020 年度からの 4 年間の調査研究事業を予定し、
 2020 年は第 5 次調査のための研究の概要、スケジュールの検討会議と付帯研究説明会の開催および募集を行った。
 2021 年度に研究計画書、調査票の作成を行い、東北大学での倫理審査と参加施設での倫理審査を行う予定であったが、運営委員会で再度調査について検討した結果、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、
 2020 年度に募集した付帯研究の実施は困難であるという結論に達した。そのため運営委員会および日本ホスピス緩和ケア研究振興財団と協議した結果、調査実施年を 2024年度に変更し、再度スケジュールの調整を行うこと、付帯研究はウィズコロナ時代に対応したものとし、再度募集すること等を決定した。



3.『ホスピス・緩和ケア白書 2023』(特集テーマの概説+データブック)作成・刊行事業

 『ホスピス緩和ケア白書』として、2022年度版まで19冊を刊行・配布している。
 2023年度版は、特集 テーマとして「アドバンス・ケア・プランニング」を取り上げた。

2004 年 ホスピス緩和ケアの歩み、実態、方向性
2005 年 ホスピス緩和ケアの質の評価と関連学会研究会の紹介
2006 年 緩和ケアにおける教育と人材の育成
2007 年 緩和ケアにおける専門性 ~緩和ケアチームと緩和ケア病棟~
2008 年 緩和ケアにおける医療提供体制と地域ネットワークの状況
2009 年 緩和ケアの普及啓発・境域研修、臨床研究
2010 年 緩和ケアにおけるボランティア活動とサポートグループの現状
2011 年 がん対策基本法とホスピス緩和ケア
2012 年 ホスピス緩和ケアに関する統計とその解説
2013 年 在宅ホスピス緩和ケアの現状と展望
2014 年 緩和ケアにおける専門医教育の現状と課題&学会・学術団体の
     緩和ケアへの取り組み
2015 年 ホスピス緩和ケアを支える専門家・サポーター
2016 年 緩和デイケア・がん患者サロン・デイホスピス
2017 年 小児緩和ケアの現状と課題
2018 年 がん対策基本法の“これまで”と“これから”  
2019 年 ホスピス緩和ケアにおける看護:教育・制度の現状と展望
2020 年 心不全の緩和ケア
2021 年 緩和ケアとリハビリテーション
2022 年 ①緩和ケアチームによる新たな試み
     ②緩和ケアに従事する人への新たな教育・研修  
2023 年 アドバンスケアプランニング(ACP)の概念と実践への取り組み
    (2023 年 3 月発行)
 




4.救急・集中治療における緩和ケアの推進 4年目(最終年度

2021 年までの調査結果から、2022 年度は、救急・集中治療領域における緩和ケアフォーラムの企画並びに準備を行った。
 医師及び看護師に対する調査の結果から、わが国において、救急集中治療領域の緩和ケアについては、臨床現場で高いニーズがある一方でその普及は初期段階にあり、啓発・普及を図ることは優先度が高い課題と考えられた。
 調査結果を踏まえて、優先度が高い課題をどのような方向性を持って臨床・研究・教育をすすめるかについて、日本緩和医療学会、日本救急医学会、日本集中治療学会等の協力を得て、救急集中治療領域の緩和ケアを推進するためのフォーラムの開催準備を行い、2023 年 2 月 5 日(日)に、新橋ビジネスフォーラムにおいて、プログラムで救急・集中治療緩和ケアフォーラムを開催した。
 フォーラムでは、救急・集中治療領域において、基本的緩和ケア、専門的緩和ケア、啓発・普及および研究・教育に課題が挙げられ、今後は、フォーラムで明確化されたこれらの課題を臨床家、研究者間で共有し、協働しながら新しい研究、教育、診療の質向上のためのプロジェクトを開始する必要が示唆された。
 なお、本研究は、2022 年第 27 回日本緩和医療学会学術大会で最優秀演題賞を得た。





5.ホスピス・緩和ケアに関する意識調査(第5回目)

 前回の調査(2017 年)から 5 年が経過しているため、従来の調査の経年的変化に加えて、人生 100 年時代と言われる中での死生観、死に方の意識など新しい項目を加えて調査を設計した。
 調査は 1000 名の男女、20 代から 70 代をインターネット調査で実施し、「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査 2023 年 ― 人生 100 年時代の逝き方 ―」と題して報告書が作成されホームページに掲載した。
 またマスコミを対象としたダイジェスト版「全国の男女 1000 名に聞いた『人生 100 年時代の逝き方』」も作成し印刷するとともに、ホームページに掲載した。
 本調査結果は。4月にマスコミへリリースし、数社で記事として 取り上げられた。



6.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざすためのセミナー は 2002 年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で実施されてきた。
 本セミナーは各地の病院ボランティアから地元での開催を希望する声も多く、開催地が偏ることのないよう配慮している。
 本年度は、昨年と同様に少人数参加による会場と、オンラインによる複合型で開催予定である。

①    日時:2022 年 7 月 22 日(金)
②    場所:大阪社会福祉会館およびオンライン(Z00M)
③    講師:田川尚登氏 認定 NPO 法人横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事
   この瞬間を笑顔に!「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」
   -こどもホスピス設立にかける想いー
参加者::60 名(会場 12 名、Zoom 参加 48 名)




7.『Whole Person Care 理論編』発行事業

 『新たな全人的ケア』(Whole Person Care 日本語版)、
『Whole Person Care 実践編』(Whole Person Care:Transforming Healthcare 日本語版)、『Whole Person Care 教育編、(MD Aware 日本語版)』に続いて
『Whole Person Care 理論編』を出版し、Whole Person Care 事業のより一層の充実を図る。

著者 恒藤 暁氏 発売元:三輪書店
なお諸事情により出版が 2023 年度へ延期となった。



8.「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 2015 年より活動を開始した「ともいき京都」は、がんを体験した人が、生きる力を発揮して知恵を育み、周りのいのちと共に生き、支え合うネットワークづくりをミッションに、(1)病院外で提供され(2)市民が気軽に利用でき(3)がん体験者と家族同士の語り合い(4)専門家によるがん相談が受けられる地域コミュニティの場として定期的な開催(2 回/月)を継続してきた。
  本年度は活動 7 年目を迎え、グリーフケアプログラムの開催に向け、国内におけるグリーフケアの実施状況の情報収集、及び他地域でがん体験者の遺族へのグリーフケアを実施している団体に現状に関するヒヤリングを行った。その結果、本団体でのがんを含む慢性疾患体験者の遺族に対するグリーフケアにおいては、対話を中心とした語り合いの場の提供、ウイズコロナ/ポストコロナ社会での実施を踏まえオンラインでのグリーフケアの提供可能性を見据えた取り組みが必要であるという方向性を確認した。
 スタッフ研修では“心地よさとは何か”をテーマとし、スタッフとしての態度を再考する結果となった。 一方で本年度は NPO 法人化を図り、10 月に NPO 法人格を取得した。

(1)開催内容と日時:
① ともいき京都ワークショップ・対話(オンライン・Zoom ミーティング):
  2022年4月〜2023年3月 各月2回(第2・第4金曜日)、14:30〜16:15、計18回開催
  (計 24 回予定)
上記時間内で電話相談対応(予約制)
②(新規)グリーフケアプログラム
 (講演会やワークショップ・対話)(オンライン):
   2023年2月19日(日)午後開催予定
③ スタッフ教育研修(対面/オンライン):
   2023年2月19日(日)午前開催予定
④(追加)NPO 法人設立イベント:
   2022年11月6日(日)11:00〜16:00(オンライン)

(2)会場
上記 1)3)4)風伝館にて配信(京都市中京区烏丸通押小路上ル秋野々町 535 番地)
風伝館使用不可の場合は京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻校舎内にて )
2)Gallery Café



9.緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした
  意思決定支援に関する研修セミナーの開催
 昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症に影響で延期となった。



10. 一般広報活動事業

 ホスピス・緩和ケアの普及・啓発活動のため、年2回の『ホスピス財団ニュース』の発行を始め、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。


ホスピス財団ニュース43号の表紙 ホスピス財団ニュース44号の表紙



11.『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷


『これからのとき』は 2006 年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。また、『旅立ちのとき』 は 2016 年 8 月に発行し、いずれも継続的に配布の要望が寄せられており、必要に応じて増刷を行った。

『これからのとき』、『旅立ちのとき』の表紙




12.International Congress on Palliative Care 参加

 隔年で開催されている学会にホスピス財団より参加を予定していたがWeb での参加となった。

①日 時:2022 年 10 月
②場 所:モントリオール(カナダ)




13.『ホスピス財団 第5 回 国際セミナー開催事業(Web)

 ホスピス・緩和ケアに関する、先進情報を入手することは、わが国におけるホスピス・緩和ケアの質の 向上に寄与することから、海外より講師を招聘し、定期的に国際セミナー開催事業を行っている。
 2022 年度は、カナダのMcGill 大学の Stephen Liben 先生を迎え、Web にて開催した。

①    日 時:2022 年 9 月 17 日(土)
②    講 師:Stephen Liben 先生 McGill 大学 医学部
③    テーマ:マインドフルネスにある深い気づきと臨床的調和
講演 1「マインドフルネスにある医療実践の教育:教えるのではなく,気づくようにする」
    "Mindful Medical Practice Teaching:Show, Don't Tell"  
講演 2「マインドフルネスにある医療実践の教育:実感することから実践することへ」
    "Mindful Medical Practice Teaching:From Realizing to Actualizing"


第5回国際オンラインセミナーのチラシ




14.APHN関連事業

 当財団はシンガポールに本部を設置する APHN(Asia Pacific Hospice Palliative Care Network)の会員として、当財設立以来、アジア太平洋地域のホスピス緩和ケアの普及と発展のため、その活動への協賛と支援を行っている。
 2022 年度は APHN 理事会の開催がWEB にて行われた。




15.日本・韓国・台湾・香港・シンガポール・インドネシア
    第4期共同研究事業(3年計画の1年目)

 過去 3 期にわたるアジアでの共同研究事業の結果、患者・家族の和を重んじるハイコンテクスト文化を有するアジアでは、終末期のコミュニケーションの在り方が欧米と異なるだけでなく、アジア諸国の間でも異なる可能性が示唆された。特に予後の対話など終末期のコミュニケーションにおいて、どこまではっきりと言葉を用いて患者に伝えるか、家族の役割をどう考えるかは重要かつ未解決の課題であることが同定された。
 本研究の主目的は、日本・韓国・台湾・香港・シンガポール・インドネシアにおいて、予後の対話に関する緩和ケア医の実践や考えが、欧米圏と比べて、あるいはアジア諸国間でどのように異なるのか、また各国内でもどのような多様性があるかを明らかにすることである。
 予後の対話に関する医師の実践や考えの多様性や複雑性について洞察が得られれば、それぞれの文化的コンテクストに即した個別化した介入とケアの助けになると考えられる。
 本年はこれまで培ってきたアジアにおける研究ネットワークを母体として、新たな共同研究を開始した。研究課題の検討を通じ、アジア文化の独自性や各国の予後の対話を含むコミュニケーションの在り方に対する理解が深まった。
 アジアにおける予後の対話の特徴を理解するため、アジア諸国の医学系研究者だけでなく、欧米や人文の研究者との検討も開始し、当初の予定より時間をかけて調査票作成を進めてきた。 二年目は調査対象者の確定、調査票と研究計画書の確定、倫理委員会の承認を経て、調査を開始する予定である。
 本研究について、APHC2023(10月 韓国)にて発表予定であり、順次学術誌にも投稿予定である。