2006年度調査研究報告
新臨床研究制度における緩和医療教育プログラムの作成と提言<2p>
III 調査・研究の成果
1)回答数京大病院の研修医から37名(回収率20.0%)、関連病院の研修医から42名(回収率37.5%)の回答を得た。 合計すると74名の研修医から回答があり、アンケートの回収率は、26.6%であった。
2)研修医の内訳
卒後1年目が24名、2年目が27名、3年目以上が27名(3年目26名、4年目以上1名)、無回答が1名であった。 男性52名、女性26名、無回答が1名であった。平均年齢は27.5±3.0歳(24~39歳)であった。 京大病院で研修中または研修経験のある研修医は64名であった。
3)京大病院での緩和医療に関する研修の満足度
A)京大病院で研修中または研修経験のある研修医64名を対象に、京大病院での緩和医療に関する研修の満足度を調査した。 53名から回答が得られ、非常に満足が1名(1.9%)、だいたい満足が11名(20.8%)、少し満足が26名(49.1%)、 非常に不満が15名(28.3%)であった(図1)。
その理由について、
- BSCとなれば他院への転院の運びとなるため、緩和医療をみる場が少ない
- 病棟あるいは外来で緩和医療について相談できる場がない。
- 化学療法施行中の患者でも緩和ケアが必要な方がかなりの数いると思われるが全く対応ができていない。
- 準急性期を主に扱う性質の病院であるため、そもそも緩和医療が治療のメインになる患者さんは他院に転院となる仕組みになっている。
- 基本的に地元の病院へ送り出す方向になってしまっていると感じます。
- pain control、精神科Dr等のチームがあればよいと思う。
- 緩和医療を必要とする症例が非常に少ない。というより必要になる人は転院になってしまう。
- 経験がない。
- 何の教育もしていただいていない。(むしろ医師向けの講義はあるのですか?)。
- Care<Cure型治療を目指す病院だと思うから仕方ない。
- 末期患者はあまり入院してきません。
- 個々に医師・グループの裁量に全て任されており、明確な指針がない。
- 特に自学自習である以外、学ぶ機会はない。
- 各科でそれぞれの緩和ケアについては研修できたが、まとまった形、よりよい方法などつっこんで学ぶことができなかった。 などが挙げられ、肯定的な意見を記載したものはほとんどなかった。
図1
京大病院での緩和医療に関する満足度(研修医53名)
B)京大病院での緩和医療の研修にあたり、64名中28名(35.4%)の研修医が京大病院に緩和ケア病棟が必要であると思うと回答した(図2)。
C)京大病院での緩和医療の研修にあたり、64名中45名(70.3%)の研修医が緩和ケアチームが必要であると思うと回答した(図3)。
図2
京大病院に緩和ケア病棟が必要だと思うか(研修医64名)
図3
京大病院に緩和ケアチームが必要だと思うか(研修医64名)
D)関連病院からの回答のうち、緩和ケア病棟やホスピスが有る病院は6病院(14.3%)、 緩和ケアチームが有る病院は20病院(47.6%)であった。緩和ケア病棟や緩和ケアチームにおけるローテーション研修を行った 研修医はほとんどいなかった。これらの病院に勤務している緩和ケア病棟や緩和ケアチームのスタッフからアドバイスや指導については、 23名中11名が「ある」と回答した。緩和ケア病棟や緩和ケアチームのスタッフとの関わりについては、27名中24名が 「非常に有意義、まあまあ有意義」と回答した。回答には欠損値や矛盾する点も含まれていたため、統計的な解析は行わなかった。
4)厚生労働省の定める「新医師臨床研修制度における指導ガイドライン」に挙げられている 緩和ケア病棟・緩和ケアチームがない場合の研修について
A)研修開始初期に緩和医療に関する研修を8時間程度行う
京大病院の研修医は、1名(2.7%)が「非常によい」、13名(35.1%)が「よい」、7名(18.9%)が「あまりよくない」、 13名(35.1%)が「よくない」と回答した(図4)。 関連病院の研修医は、5名(11.9%)が「非常によい」、15名(35.7%)が「よい」、13名(18.9%)が「あまりよくない」、 6名(7.1%)が「よくない」と回答した(図5)。
図4
緩和医療に関する研修を8時間程度実施することについて(京大病院研修医)
図5
緩和医療に関する研修を8時間程度実施することについて(関連病院研修医)
B)1年間に2日間の緩和医療に関するセミナーの受講
京大病院の研修医は、1名(2.7%)が「非常によい」、18名(48.6%)が「よい」、6名(16.2%)が「あまりよくない」、 7名(18.9%)が「よくない」と回答した(図6)。 関連病院の研修医は、8名(19.0%)が「非常によい」、20名(47.6%)が「よい」、9名(21.4%)が「あまりよくない」、 3名(7.1%)が「よくない」と回答した(図7)。
図6
1年間に2日間、緩和医療に関するセミナーを受講することについて(京大病院研修医)
図7
1年間に2日間、緩和医療に関するセミナーを受講することについて(関連病院研修医)
C)1ヶ月に1回の院内での勉強会・症例検討会
京大病院の研修医は、2名(5.4%)が「非常によい」、11名(29.7%)が「よい」、12名(32.4%)が「あまりよくない」、 8名(21.6%)が「よくない」と回答した(図8)。 関連病院の研修医は、7名(16.7%)が「非常によい」、22名(52.4%)が「よい」、7名(16.7%)が「あまりよくない」、 5名(11.9%)が「よくない」と回答した(図9)。
図8
1ケ月に1回、院内で緩和医療に関する勉強会、症例検討会を開催し参加する(京大病院研修医)
図9
1ケ月に1回、院内で緩和医療に関する勉強会、症例検討会を開催し参加する(関連病院研修医)
D)緩和コンサルタントによる随時コンサルテーションを通じた研修
京大病院の研修医は、8名(21.6%)が「非常によい」、17名(45.9%)が「よい」、3名(8.1%)が「あまりよくない」、 1名(2.7%)が「よくない」と回答した(図10)。 関連病院の研修医は、12名(28.6%)が「非常によい」、19名(45.2%)が「よい」、5名(11.9%)が「あまりよくない」、 2名(4.8%)が「よくない」と回答した(図11)。
図10
コンサルテーションを通じた研修(京大病院研修医)
図11
コンサルテーションを通じた研修(関連病院研修医)
A)、B)、C)、D)いずれの方法においても、関連病院の研修医ほうが、「非常によい、よい」と回答する割合が多い傾向があった。