研究2 ■目的・方法 ホスピスの遺族を対象に教育的介入プログラムを実施し、参加者の主観的評価と感情状態を指標として、プログラムの有効性について検討する。
■内容・実施経過 1. 教育的介入プログラムの概要 教育的介入プログラムの目的は、死別後の悲嘆や対処方法など遺族にとって有用と思われる情報を提供して、遺族の認識や態度を変容させ、その結果として死別後の心理社会的適応を促すことである。 本研究での教育的介入プログラムは、教育講演(40分)とグループディスカッション(90分)によって構成されており、病院内の一室にて実施された。教育講演は、大学で死別悲嘆に関する研究に従事している心理学者が行った。講演内容は、死別後の悲嘆反応や悲嘆プロセス、対処方法などである。グループディスカッションは、教育講演終了後、約20分の休憩時間の後、6~8名のグループに分かれて、ホスピスナース等がファシリテーター役となって行われた。
2. 対象 2001年1月から3月の間に淀川キリスト教病院ホスピスにて死別を経験した遺族と、2000年1月から12月の間に同ホスピスで死別を経験した遺族のうち年1回開催のホスピス「家族会」に参加した遺族、同ホスピスの遺族のサポートグループ「すずらんの会」に参加した経験のある遺族の計153名を対象に、教育的介入プログラムの案内を郵送にて行った。返信用ハガキにて参加意思を確認したところ、153名中89名から返信があり、33名(22%)が参加を希望した。当日参加者4名を含め、当日の参加者は37名となった。 本研究の解析対象は参加者37名のうち、プログラム全てに参加し、プログラム前後のアンケートへの回答が得られた27名である。性別は男性が8名(30%)、女性が19名(70%)であった。年齢は、44歳から79歳で平均62.8歳(SD=9.1)であった。故人との続柄は、妻が16名(59%)、夫が7名(26%)、娘が2名(7%)、妹・婿が各1名(4%)、がであった。死別からの経過期間は7~45カ月で、平均22.7カ月(SD=12.0)であった。
3. 調査内容 (1)教育的介入プログラムの主観的評価 教育的介入プログラムの満足度と必要性について、それぞれ選択式での回答を求めた。また、教育的介入プログラムについての感想を自由記述式で求めた。 (2)感情状態 参加者の感情状態を測定するため、POMS(Profile of Mood States)日本語版(横山・荒記, 1994)を使用した。POMSとは、個人の感情状態を「緊張-不安」「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」「活気」「疲労」「混乱」という6つの領域から測定するテストである。本研究では、時間的制約と回答者の負担を考慮し、個人のもつ緊張感や不安の程度を表す「緊張-不安」(9項目, 0~36点)と、個人内の元気さや活力を表す「活気」(8項目, 0~32点)の領域についてのみ測定した。
4. 調査方法 参加者の感情状態は、教育的介入プログラムの前後の2時点で測定した。1回目の測定に関しては、受付時に自記式の調査用紙を配布し、プログラム開始までの間にそれに記入するよう参加者に求めた。2回目の測定は、プログラム終了後に同内容の調査用紙を参加者に配布し、その場で記入してもらった。また、教育的介入プログラムに関する参加者の主観的評価については、受付時に自記式の調査用紙を配布し、プログラム終了までに記入するよう求めた。
■成果 1. 教育的介入プログラムに対する主観的評価
1-1. 満足度と必要性(表2) 教育的介入プログラム、特に教育講演の満足度と必要性について尋ねた。その結果、満足度に関しては、参加者全員が「良かった」もしくは「まあまあ良かった」と回答していた。また、必要性に関して、参加者全員が今後も開催した方が良いと回答していた。 1-2. 参加者の感想 自由記述式で求めた教育的介入プログラムに関する感想は肯定的なものが大半であり、否定的な感想は見られなかった。また、感想の内容から、遺族が自らの状態への理解と洞察を深めることに今回のプログラムが寄与できていたことが分かる。このことは、遺族の認識や態度を変容させるという教育的介入の機能を、今回のプログラムはある程度果たしていたことを示すものであると考えられる。参加者の感想のいくつかを以下に示す。 |
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「からだとこころの不調(についての話)は特に参考になりました。(話題に出た)日薬、時薬を信じ、前向きに生きていこうと思います。」(65歳女性) 「自分だけではないとよく分かりました。」(63歳女性) 「まとめていただいた内容に一つ一つ合点ができて納得できました。」(59歳女性) 「自分のこの1年半を振り返って、納得することが多く、とても参考になりました。」(44歳男性) 「本日の講演は何もかもその通りです、良かったです。」(69歳女性) 「自分にも同様なことが多々ありました。今後とも宜しくお願いいたします。」(75歳男性)
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