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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2004年度調査研究報告


■わが国における緩和ケアチームの実態調査―第2報
 大学病院の緩和ケアを考える会・聖マリアンナ医科大学病院泌尿器科
 西田 茂史

I目的
昨年平成15年度の調査研究では大学病院のうち27%の施設において緩和ケアチームが活動中であり、24%の施設が立ち上げを予定しているという現状が明らかになった。活動の課題としては主治医との連携や専任スタッフ不足などがあげられた。今年度は、平成15年度の質問項目を大幅に見直し、さらにわが国における緩和ケアチームの実態について、アンケート調査をおこなった。
II対象と方法
アンケート調査用紙を全国の大学病院123施設に送付し、設問 1 から設問 8 までは各施設の看護部長に回答いただき、設問 9 以降は緩和ケアチームで活動を行っている担当者に回答していただくよう依頼した。
III結果
調査用紙を大学病院123施設に送付し、105件の返送を受け取り、うち103件の有効な回答を得た。有効回答率は83.7%であった。
設問 1 「現在の病床数をお答えください」では、500~750床が34施設(33.0%)で最も多く、次に1001床以上が26施設(25.2%)であった。以下、順に750~1000床が18施設(17.5%)、250~500床が15施設(14.6%)、250床以下が10施設(9.7%)であった(図表1)。
設問 2 「昨年度の平均在院日数をお答えください」では、20日以下(47.6%)と21~25日(42.7%)で 9 割を占めた。最も長かったのは63日であった(図表2)。
設問 3 施設の所在地域について、実際の送付先は関東が55施設(44.7%)と最も多く、次いで近畿の22施設(17.9%)であった(図表3)。
設問 4 配布先は国公立が53、私立が68施設であった。
設問 5 「現在、院内に緩和ケア病棟(緩和ケア病棟の認可を受けた施設)はありますか」に対して、「ある」と回答したのは 4施設、「ない」が99施設であった。実際には5施設存在するが、1施設からは回答を得られていない。「ない」と回答した施設のうち、2年以内に設立の予定があるとしたのは6施設であった(図表4)。
設問 6 「現在、院内に在宅緩和ケア(訪問看護、医療など)を行う部署がありますか」に対して「ある」と回答したのは19施設(18.4%)であった。「ない」と回答した84施設のうちで2年以内に設立の予定があるとしたのは2施設であった(図表5)。
設問 7 「地域の在宅緩和ケアやホスピス、緩和ケア病棟を紹介する部署が院内にありますか」に対して「ある」と回答したのは75施設(72.8%)であった。
設問 8 「現在、院内に緩和ケアチームがありますか」について「ある」と回答したのは30施設(29.1%)であった。設問では、緩和ケアチームとは、「医師・看護師が最低各 1 名所属し、病棟をこえて緩和ケアの提供またはコンサルテーションを行っているチーム」を指し、緩和ケア診療加算算定は問わないという定義をした。「ない」と回答した73施設のうち2年以内に設立の予定がるとしたのは9施設であった(図表6)。
これ以降の設問は、緩和ケアチームがあると回答した施設に対して「チームで活動している担当者」に回答していただくよう求めた。30施設が回答を進めた。
設問 9 「院内で緩和ケアチームが活動を始めたのはいつ頃ですか」では、30施設全てから回答が得られた。2004年12月時点で、開始から平均して22.9ヶ月が経過している。
設問10 「緩和ケアチームの活動に対して、緩和ケア診療加算の算定をしていますか」に対しては、「算定している」が 9 施設(30%)、「算定していない」が21施設(70%)であった。算定開始から、2004年12月時点で平均して19.38ヶ月が経過している。算定していない理由で最も多かったのが、「日本医療機能評価機構等が行う病院機能評価を受けていない」であり、半数以上の11施設が挙げていた。以下「専従看護師がいない」10施設(47.6%)、「緩和ケアに専従できる医師がいない」9施設(42.9%)であった(図表7)。
設問11 緩和ケアチームの構成メンバーについての設問。
専従医師の人数は17施設が0人、10施設が1人、2施設が3人と回答した。平均で0.55人であった。診療科は麻酔科(7)が最も多く、ほかは1人ずつ放射線科、メンタルクリニック、臨床腫瘍部、外科であった。
専任医師の人数は1人と2人がともに7施設で最も多く、次いで3人が6施設であった(図表8)。診療科は精神科(16)と麻酔科(15)が多く、以下は放射線科(6)、外科(5)であった(図表9)。
専従看護師は「いない」が21施設、「1 人」が9施設であった。資格としては、がん性疼痛看護認定看護師(3)、がん看護専門看護師(1)、ホスピスケア認定看護師(1)であった。
専任看護師は 1人(11)が最も多く、以下、0人(6)、2人(6)、3人(2)、4人(2)と続く(図表10)。所属はさまざまで病棟(4)、外来(3)をはじめとして26種類があげられた(図表11)。資格ではがん性疼痛看護認定看護師(9)が最も多く、ホスピスケア認定看護師(5)、がん看護(2)であった(図表12)。
MSWは 1 人が11施設、2人が2施設であった。
その他の専任の人数は2人(10)、1人(6)が多く、残りの回答は1施設ずつで0人、3人、4人、5人、7人であった。職種は薬剤師(20)が最も多く、栄養士(5)、管理栄養師(2)、臨床心理士(2)、ほかには、在宅医療室、PT、OT、心理士、リンク医師があがった。
設問12 緩和ケアチーム活動のインフォメーションを行っている施設数は29、行っていないのは 1 施設であった。インフォメーションの対象は、院内の医療者(100%)、患者家族(41.4%)、地域の医療者(17.2%)であった(図表13)。
設問13 緩和ケアチームに所属するメンバーが緩和ケアチームの活動として行っていることをたずねた。疼痛コントロールは全ての施設で行われていた。その他の症状(呼吸困難感、嘔気、全身倦怠感など)コントロールと精神症状(せん妄、不安、うつ状態、不眠など)コントロールが90%台、患者・家族の意志決定への支援(治療の継続、DNR、今後の療養先決定など)と患者・家族への精神的サポート(傾聴、家族関係の調整、医療者とのコミュニケーションの改善など)および医療者への緩和ケア教育(医学生、看護学生への教育、卒後教育など)が80%台、在宅・緩和ケア病棟・他院への紹介を含む療養環境整備のコーディネートが70%台であった。遺族ケア(患者が亡くなった後に何らかの形で家族へ連絡しているなど)は10%であった(図表14・15)。
設問14 緩和ケアチームの依頼方法としては、依頼用紙を使用が93.3%、電話または口頭連絡が60%であった(図表16)。依頼者については、医師(96.7%)、医師以外の医療者(73.3%)、患者・家族からの直接相談(36.7%)であった(図表17)。
設問15 緩和ケアチーム活動の状況について。
専従医師(オンコール体制による対応も含む)がいる12施設のうちで、24時間対応しているのは4施設、24時間対応はしていないのが8施設であった。
専任医師の緩和ケアチームでの活動時間は、1週間に3~1日(43.3%)が最も多く、以下、5~4日(23.3%)、1日以下(16.7%)、7~6日(10%)であった。
専従看護師(オンコール体制による対応も含む)がいる9施設のうちで、24時間対応しているのは1施設であった。
専任看護師の緩和ケアチームでの1週間あたりの活動時間は、3~1日(48%)が最も多く、 日以下(32%)、5~4日(16%)であった。
医師・看護師以外の職種で、活動時間が最も多いとしてあげられた職種名は、薬剤師(54.5%)、MSW(22.7%)、栄養士(18.2%)、管理栄養師(4.5%)であり、全員が専任であった。活動頻度は1週間に3~1日(50%)が多く、次いで1日以下(27.3%)であった。
緩和ケアチームのカンファレンスを開催しているのは27施設(90%)であり、開催頻度は週に1回程度(63.3%)、月に1回程度(20%)であった(図表18)。
カンファレンスの内容は、新規患者の紹介(70%)、担当患者のケアの検討(80%)、亡くなった患者の症例検討(23.3%)であった(図表19)。
緩和ケアチーム活動内容記録について、診療録とは別に患者別記録があるのは19施設(63.3%)であり、11施設(36.7%)で患者別記録はないという回答を得た。
緩和ケアチームの活動内容の報告を病院内で行っているかという設問では、活動を開始して1年以上経過している緩和ケアチーム25施設が回答し、行っているのは11施設(44%)であった。頻度は、年に1回以下が6施設、年に2回以上が5施設であった。報告を行っていない14施設のうち10施設(71.4%)が行う予定があるとしていた。
設問16 緩和ケアチームの年間患者数(実数)は29施設が回答し、平均84.26人標準偏差69.13であった。1日あたりの患者数(過去 1 ヶ月の平均)は24施設が回答し、平均9.6名標準偏差6.76であった。患者一人あたりの平均ケア日数(過去1年間)では23施設が回答し、平均24.05日標準偏差11.37であった。
過去1年の緩和ケアチームのケア終了時の転帰割合は平均で、死亡(51.84%)、在宅ケアへの移行(18.38%)、転院(11.15%)であった。
設問17 回答した緩和ケアチーム担当者の職種は、医師が30施設、看護師が26施設であった。
設問18 緩和ケアチーム活動での今後の課題として記述された内容を以下のように整理することができる。
課題 1 . 院内でのPRや活動報告の必要性
課題 2 . 教育の必要性
a. 院内教育の必要性
b. 関係機関への教育の必要性
課題 3 . チームの活動形態について検討の必要性
課題 4 . チーム活動時間の確保の必要性
課題 5 . 人材育成の必要性
課題 6 . 緩和ケア病棟設立の必要性
緩和ケアチーム活動で困難に感じていることを以下のように整理できる。
1.構造上の問題
1)施設内のチーム位置付け
a.位置付けが不明瞭
b.採算がとれずに軽視されがち
c.活動拠点がない
2)人手不足
a.時間外の活動になる
b.時間が確保できない
c.適切なケアが提供できない
d.実働できるメンバーがいない
3)人事異動
a.ケアの質が保てない
4)ケアを提供する環境
a.一般病棟での対応なのでプライバシーが保てない
2.プロセスの問題
1)病棟スタッフの知識/技術不足
2)アドバイスが受け入れられない
3)コミュニケーションに関すること
a.病棟スタッフ
b.他職種
c.チーム内
4)依頼が遅い/出ない
5)「コンサルテーション型」というケア形態に関わる問題
6)症状マネジメントが困難
7)活動が軌道に乗っていない
8)依頼数が多くて対応できない
3.患者/家族の知識、理解不足の問題
IV考察
平成15年度の調査研究では大学病院のうち27%の施設において緩和ケアチームが活動中であり、24%の施設が立ち上げを予定しているという現状が明らかになった。活動の課題としては主治医との連携や専任スタッフ不足などがあげられた。
平成16年度のアンケート結果では、病床数とチームの有無は統計結果により、関連ありなので、やはり病床数が多いほうがチームのメンバーを確保しやすいといえるのではないかと考えられた。
平成16年 4 月から全国の87医療機関で医療点数の包括化がスタートした。平均在院日数についての回答の結果では、特定機能病院での入院期間短縮が進んでいる事実が確認された。
院内に緩和ケア病棟(緩和ケア病棟の認可を受けた施設)はありますかとの質問に対して、大学病院では緩和ケア病棟設立は積極的に行われているわけではなさそうな現状が浮き彫りになっている。
一方、在宅緩和ケアを行う部署はただ内容は「やっている」と申告しただけなので不明ではあるが、緩和ケア病棟と比較すると多い。在院期間短縮の流れと関連して、多くの大学病院で在宅緩和ケア又は、施設を患者の療養先の選択の一つとして、積極的に紹介している。病院の緩和ケアチームの役割との関連はどうか。大学病院では緩和ケアチームは症状を早期にマネジメントして、在宅へつなぐことが最も期待される役割があることも事実である。
緩和ケアチーム保有が、全体の 3 割という数は緩和ケアの教育機関としてはやはり少ないのではないかと考える。緩和ケアがまだ、標準的な医療として認められていないのかもしれない。
昨年の結果と比較すると機能評価を受けていない割合が減少し、専従の看護師の確保ができない割合が増している。人員の確保の問題。同じく、チームのメンバー確保の問題がある。
診療加算の規定外では、薬剤師の参加が多い。提供しているケアが症状マネジメント中心となっていることに関係していると考えられる。施設での緩和ケアとは明らかに提供しているケアが違う。この理由については、ニーズの問題か、もしくは、大学病院という医療機関の特殊性に起因しているのか大いに興味のもたれるところである。
一般の人で緩和ケア病棟について「知っている」割合は半数弱。そう考えるとこの患者・家族へのインフォメーション割合は不足ではないかと考えられる。
詳しいケア内容は尋ねていないので「行っている」ことにばらつきがある可能性があり、また、施設での緩和ケア提供との差、ケア提供がコンサルテーション型中心型の緩和ケアチームであるため、特に施設の緩和ケアと違うのは遺族ケアの行われている割合が低いことが明らかになった。
緩和ケアチームにおいて、専任では活動時間はかなり限られているという現状が明らかになった。
緩和ケア加算を行なっている施設での問題点は、現在の緩和ケアチームの活動に対する緩和ケア加算点数内容では、専任スタッフの人件費分も確保できないという問題点が浮かび上がってきた。
また緩和ケアチームは活動していても、緩和ケア加算を予定する施設は、逆に減少傾向を示している。この理由についても、やはり、同様に専任スタッフの人件費分も確保できないという緩和ケア加算の問題点が上げられている。
現在、各大学病院では、包括化医療実施や初期臨床研修医制度のスタートに伴って、大幅にスタッフ削減の傾向にあり、これらの流れの中で、緩和ケアチーム専任スタッフの人件費をどう確保するかが一つの大きな問題点となっている。緩和ケア加算の見直しを是非希望する意見が多く認められたのも事実である。
緩和ケアチームの活動については、緩和ケア加算の有無を除いても、緩和ケアチームの活動について、各施設で、病院側のバックアップ体制の不備が指摘されている。緩和ケアチーム活動を院内で支えるバックアップ体制を経営者側に強く求めていく必要があると考えられる。
【附記】
全国47都道府県の社会保険事務局に「緩和ケア診療加算の認可を受けている施設」をたずねた。2003年度に行った同様の調査では45件の回答を得て29施設が明らかになっている。今回は43件の回答があり、以下の37施設において加算を受けていることが明らかになった。
埼玉県( 5 施設)
川越胃腸病院
医療法人社団東光会戸田中央総合病院
医療法人財団石心会狭山病院
帯津三敬病院
埼玉医科大学病院
大阪府( 4 施設)
ベルランド総合病院
大阪府立成人病センター
東大阪市立総合病院
大阪医療センター
東京都( 3 施設)
順天堂大学医学部附属順天堂医院
昭和大学病院
日本大学医学部附属板橋病院
神奈川県( 3 施設)
横浜市南部病院
北里大学病院
東海大学医学部付属病院
兵庫県( 3 施設)
赤穂市民病院
兵庫県立尼崎病院
市立加西病院
群馬県( 2 施設)
公立富岡総合病院
伊勢崎市民病院
静岡県( 2 施設
社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院
社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷三方原病院
愛知県( 2 施設)
社会保険中京病院
名古屋掖済会病院
滋賀県( 2 施設)
大津市民病院
滋賀県立成人病センター
宮崎県( 2 施設)
医療法人倫生会三洲病院
宮崎市郡医師会病院
青森県
八戸市民病院
福島県
独立行政法人労働者健康福祉機構
茨城県
総合病院東京医科大学霞ヶ浦病院
新潟県
新潟市民病院
山梨県
山梨大学医学部附属病院
香川県
香川県立中央病院
愛媛県
松山べテル病院
福岡県
医療法人雪の聖母会聖マリア病院
沖縄県
那覇市立病院
以 上





図表1病床数
図表2平均在院日数
図表3所在地
図表4緩和ケア病棟の有無
図表5在宅緩和ケア部署の有無
図表6緩和ケアチームの有無
図表7算定していない理由
図表8
専任医師人数 施設数
0人
1人
2人
3人
4人
5人
6人
7人
9人
合計 30
図表9
専任医師の診療科名 人数
精神科 16
麻酔科 15
放射線科
外科
メンタルヘルス
呼吸器内科
精神神経科
内科
リハビリ
ペインクリニック
精神神経科(医療チームセンター)
メンタルクリニック
総合内科
消化器内科
血液腫瘍科
消化器外科
乳腺内分泌
泌尿器科
産婦人科
口腔外科
総合診療部
図表10
専任看護師人数 施設数
0人
1人 11
2人
3人
4人
5人
6人
7人
合計 30
図表11
専任看護師所属 人数
病棟
外来
外科系病棟
脳神経外科病棟
看護部
消化器外科
外来化学療法室
一般病棟
内科系病棟
療養支援室
在宅医療支援推進室
血液内科
管理室
外科
内科
消化器センター
呼吸器センター
呼吸器
心臓内科
呼吸器外科
呼吸器内科
耳鼻咽喉科
消化器内科
小児科看護室
麻酔科
婦人科
図表12看護師専任資格
図表13インフォメーション対象
図表14ケア内容1
図表15ケア内容2
図表16依頼方法
図表17依頼者
図表18カンファ開催頻度
図表19カンファ内容