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(2011年7月1日~)
事業報告
2014年度 第15期事業報告書     (自:2014年4月1日 至:2015年3月31日)



[概 括]

 2014年度は、質の高い調査研究と人材育成事業を柱としつつ、普及・啓発および国際交流を加えた4つの事業領域で16の事業を行った。
 調査・研究事業では、非がん疾患の終末期に関する調査を立ち上げた。また、継続して実施している大規模な調査研究「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」は第3次調査の3年目を迎え実調査が開始された。人材育成事業では、引き続き“Whole Person Careワークショップ”を、札幌、大阪の2箇所で開催し、またカナダMcGill大学よりWhole Person Careの第一人者であるHutchinson先生を招聘しワークショップを開催した。また広報・啓発事業や国際交流事業などの各事業も、計画通りに進められて、ご協力戴いている皆様方に深く感謝する。
 以下、個別の事業毎に実施報告の概要を記した。



各事業の活動内容について下記の通りご報告申し上げます。

   
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
3.  『ホスピス・緩和ケア白書 2015』(研究論文集+データブック)作成・刊行事業
4.  緩和ケアにおける治療介入の効果・安全性に関する多施設データベース研究(2年目
5.  非がん疾患の終末期医療の実態に関する調査
6.  ソーシャルワーカーのスキルアップのための実践セミナー開催事業
7.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
8.  Whole Person Careワークショップ開催事業
9.  グリーフケア研修セミナー開催事業
10.  Hutchinson先生によるワークショップ開催事業
11.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
12.  一般広報活動事業
13.  『これからのとき』の冊子増刷
14.  日本・韓国・台湾の緩和ケア医の終末期医療に対する態度に関する比較文化研究
15.  APHN関連事業費
16.  日本・韓国・台湾共同研究事業の会議費
             



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)

2014年度の調査・研究として公募申請された3件について、事業委員会において審査した結果、次の1件が採択された。(公募制度9年目)なお、公募の本調査研究事業は、2015年度より新しい形式での公募事業として、その対象範囲を拡大して実施する予定である。

(1) 家族・医療者の考える終末期せん妄の治療とケアゴール(患者と家族介護者に取って苦痛が出来るだけ少ない状態)を調査し、終末期せん妄を評価する為の尺度を作成する研究



2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第3次調査・3年目)

同名の調査研究事業の第1回目(J-HOPE1)は2006年度~2008年度の3ヵ年に亘って実施され、引き続き、2009年度~2011年度に第2回目(J-HOPE2)が実施された。これらは世界的に最大規模かつ質の高い研究として国際的にも評価されている。本研究は定期的に緩和ケア病棟の質の評価を行い、それを各施設にフィードバックすることにより質の改善を促すというものである。今回、在宅ホスピス・緩和ケア施設を含め第3次調査研究が企画された。2012年度(初年度)に研究プロトコルが策定され、2013年度は本研究と付帯研究(27件)の研究計画書、調査票の作成が行われた。2014年度は、本研究では185施設、約15,000名を対象に調査票を送付し、結果の解析を行った。この調査研究は4か年に亘って行われ、最終的にJ-HOPE3として公表する予定である。




3.『ホスピス・緩和ケア白書 2015』(研究論文集+データブック)作成・刊行事業

『ホスピス緩和ケア白書』として、2014年度版までに下記の11冊を刊行・配布している。2015 年度は「ホスピス・緩和ケアを支える専門家・サポーター」を特集記事とした。

2004年 ホスピス緩和ケアの取り組みの概況
2005年 ホスピス緩和ケアの質の評価と関連学会研究会の紹介
2006年 緩和ケアにおける教育と人材の育成
2007年 緩和ケアにおける専門性 ~緩和ケアチームと緩和ケア病棟~
2008年 緩和ケアにおける医療提供体制と地域ネットワークの状況
2009年 緩和ケアの普及啓発・境域研修、臨床研究
2010年 緩和ケアにおけるボランティア活動とサポートグループの現状
2011年 がん対策基本法とホスピス緩和ケア
2012年 ホスピス・緩和ケアに関する統計とその解説
2013年 在宅ホスピス・緩和ケアの現状と展望
2014年 緩和ケアにおける専門医教育の現状と課題
    &学会・学術団体の緩和ケアへの取り組み
2015年  ホスピス・緩和ケアを支える専門家・サポーター
 




4.緩和ケアにおける治療介入の効果・安全性に関する多施設データベース研究(2年目)

緩和ケア領域では効果や合併症が明らかでないままに、経験的に行われている治療が多いのが現状である。本研究は多施設でコホート研究を行い、治療の有効性を明らかにし患者に生じる予測される結果、すなわち治療の有効性と副作用のデータベースを構築することを目的とするものである。研究課題は全身倦怠感に対するステロイド、呼吸困難に対するモルヒネの持続投与など効果と副作用に関するデータベースを作成する。2013年度は、研究組織の構築、参加施設によるミーティング、マスタープロトコル作成および研究責任施設における倫理委員会審査、およびデータサーバの準備を行った。2014年度は各施設倫理委員会での検討の上、患者登録の体制を整備した。




5.非がん疾患の終末期医療の実態に関する調査

日本では非がん疾患の終末期での緩和ケアに関する調査が少ない。本研究では、非がん疾患への緩和ケア、専門的緩和ケアの提供などに関する調査を行い、日本における今後の非がん疾患の終末期医療の方向性を考える上での有用なデータを集積する。初年度は準備期間であり、非がん疾患の絞込みなどの研究プロトコルを検討する会議を開催し、次年度に研究を実施する予定である。




6.ソーシャルワーカーのスキルアップのための実践セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるソーシャルワーカーのスキルアップを図るためのセミナーで、2006年から継続して実施され、“ホスピス・緩和ケアの患者、家族に貢献できる人材育成”を目的とするものである。2014年度は10月に京都市に於いて「かけがえのない時間を大切に過ごすための意思決定支援」をテーマに講演とワークショップを実施した。

・実施日:2014年10月12日(日)
・場 所:メルパルク京都(京都市)
・基調講演:京都府立医科大学 細川 豊史先生
・ワークショップ講師:福地智巴氏 田村里子氏
・参加者:53名
  ソーシャルワーカーのスキルアップのための実践セミナーの様子




7.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざして、2002年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で進めているプログラムである。なお、従来の研修会は京阪神地域で行われていたが、全国各地での開催を望む声が多く、2014年度は以下の 2箇所で開催された。

①神戸開催
・実施日:2014年7月3日(木)
・場 所:三宮研修センター(神戸市)
・講 演 1.緩和ケアの本質 ~死を通して、生といのちを考える~
        高宮 有介氏 昭和大学医学部 医学教育推進室
     2.寄り添う心 ~スピリチュアルケアの視点から~
       大河内 大博氏 上智大学グリーフケア研究所
・参加者:224名

②松山開催
・実施日:2014年9月3日(木)
・場 所:愛媛大学医学部(松山市)
・講 演 1.「生活を途切れささないために・・・緩和ケアとエンパワメント」
       櫃本 真聿氏 愛媛大学医学部附属病院 総合診療サポートセンター長 
     2.「病院ボランティアの役割とは・・・ボランティアがいる病院の風景」
       中橋 恒氏  松山ベテル病院 院長・ホスピス病棟医長
・参加者:78名

ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー(神戸)の様子
セミナー(神戸市)
  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー(松山)の様子
セミナー(松山市)




8.Whole Person Careワークショップ開催事業
 本ワークショップは2012年より開催され、ホスピス・緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフの育成を目的としたもので、従来の知識提供型ではなくグループワークショップを通じてWhole Person Careの学びを深めるものである。2014年度は、本ワークショップを札幌、大阪、福岡の3会場で開催を予定していたが、福岡会場は参加者が少なく中止となり、札幌、大阪の2会場で実施した。

・実施日:第4回 博多会場 中止
      第5回 2014年8月9日(土) 場所:千里ライフサイエンスセンター(豊中市)
      第6回 2014年8月23日(土) 場所:TPK札幌ビジネスセンター
・講 師:恒藤 暁氏(大阪大学大学院医学系研究科)
      安田裕子氏(一般社団法人スピリチュアル研究所)
・参加費:賛助会員10,000円 非会員15,000円 
・参加者:第5回 12名  第6回 12名 



9.グリーフケア研修セミナー開催事業

ビリーブメント(死別)とそれに伴うグリーフ(悲嘆)に対する援助は、ホスピス・緩和ケアの領域のみならず、東北大震災という未曽有の災害により大きな社会的関心事となりつつある。しかしながら、ビリーブメント体験についての理解や、死別者への援助手法に関して、我が国での学術的な貢献はまだまだ十分とはいえないのが現状である。財団はスピリチュアルケアへの貢献の一環として、此の分野での基礎研究から臨床実践までを含めた学術的交流として「グリーフ &ビリーブメント カンファレンスの開催を定期的に実施している。2014年度は第6回目とし て2015年1月に開催した。

・実施日:2015年1月17日(土)
・場 所:関西学院大学梅田キャンパス
・参加者:84名
  グリーフケア研修セミナーの様子




10.Hutchinson先生によるワークショップ開催事業

 2013年度にカナダMcGill大学のHutchinson教授を招聘し、ホスピス・緩和ケア従事者の育成を図る目的で講演会と実践的なワークショップを開催した。Whole Person Careとは、治療(Curing)と癒し(Healing)から成る新しい見方で、従来の考え方を根本的に変えるアプローチである。これによりホスピス・緩和ケアでのパラダイムが大きく転換し、財団の使命であるホスピス・緩和ケアの質の向上に大きく寄与することを期待している。本年の日本緩和医療学会の海外招待演者としてHutchinson先生が来日されるのを機に、再度、財団主催のワークショップを実施した。

・実施日:2014年6月22日(日)
・場所:千里ライフサイエンスセンター(豊中市)
・参加費:賛助会員3,000円 非会員8,000円
・参加者:47名
 
ハッチンソン先生によるワークショップの様子-1   ハッチンソン先生によるワークショップの様子-2




11.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

 ホスピス・緩和ケアについての正しい理解を一般の方々へ広く啓発する目的で、財団設立 以来継続して進めている講演とシンポジウムを軸としたプログラムである。2013 年度までに 26 都市で開催している。2014 年度は、山梨県立中央病院の協力を得て、11 月に甲府市で開 催した。

・実施日:2014年11月30日(日)
・場 所:甲府冨士屋ホテル(甲府市)     
・特別講演:これからの「医療」は「介護」と「福祉」とともに
       伊藤 真美氏 花の谷クリニック院長
・参加者:276名



ホスピス・緩和ケアフォーラムの様子-1   ホスピス・緩和ケアフォーラムの様子-2




12.一般広報活動事業

 年2回の『ホスピス財団ニュース』の発行を主として、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行う。また、財団PR用のパネルを新たに制作した。



 
     




13.『これからのとき』の冊子増刷

 『これからのとき』(大切な方を亡くしたあなたへ)は2006年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。本冊子は継続的に追加配布の要望が寄せられており、当財団の使命に沿うもの として必要に応じ増刷を行った。  
     




14.日本・韓国・台湾の緩和ケア医の終末期医療に対する態度に関する比較文化研究

 日本での終末期医療における洞察を深める目的で、日本・韓国・台湾の緩和ケア医の死生観の差を検討することは意義ある事から、次の2テーマについて日本・韓国・台湾の緩和ケア医に対してアンケート調査を行った。
(1)終末期医療における日本・韓国・台湾の緩和ケア医の実践と経験の比較
(2) 日本・韓国・台湾の緩和ケア医の自律性と望ましい最期に対する考え方の比較
2013年は日本・韓国・台湾すべての国で倫理審査が終了し、質問紙調査が実施された。日本・韓国・台湾それぞれ、400名、200名、150名の対象が得られている。2014年度は最終的なまとめ作業を行った。




15.APHN関連事業費

 当財団はシンガポールに事務所を設置するAPHN(Asia Pacific Hospice Network)の会員として、当財団設立以来その活動を支援してきている。2014年は6月に香港で理事会が開催され、当財団から理事長が出席予定であったが、都合により欠席となった。




16.日本・韓国・台湾共同研究事業の会議費

 韓国ホスピス緩和ケア協会からの提案で、日本・韓国・台湾での共同研究の話が提案された。 国際交流の一環としても意味があると考え、2014 年度はその準備のための会議を日本で開催 する予定であったが、会議は開催せず、改めて2015 年度より、第2 次日本・韓国・台湾共 同研究事業として開始することとなった。