■Module15■ 抑うつと希死念慮
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〔一般問題〕
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問題1 |
抑うつのスクリーニングについて正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
がん患者の抑うつはスクリーニングに適した疾患(症候群)である |
(2) |
がん患者の抑うつのスクリーニングツールを選択する際には,簡便さを最も重視する必要がある |
(3) |
進行がん患者の抑うつのスクリーニングの国際標準は,患者自身に「気分が落ち込んでいませんか?」と尋ねることである |
(4) |
抑うつのスクリーニングには,あわせて有効な治療プログラムを併用することが望まれる |
(5) |
抑うつのスクリーニングの結果,陽性であったものに対しては,治療を行う必要がある |
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問題2 |
抑うつの疫学について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
わが国のがん患者における大うつ病の有病率は20~25%程度である |
(2) |
わが国の一般人口における大うつ病の有病率は欧米に比べて低い |
(3) |
がん診断後の適応障害および大うつ病の有病率は,がんの経過に従って低くなっていく |
(4) |
がん患者の大うつ病の有病率には性差がない |
(5) |
がん患者の適応障害および大うつ病は高齢になるに従い頻度が高くなる |
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問題3 |
抑うつの病態について誤っているものはどれか,2つ選べ |
(1) |
がん患者にみられる大うつ病の生物学的メカニズムは,一般人口にみられる大うつ病と同じであることが示されている |
(2) |
がん患者にみられる適応障害と大うつ病の臨床的危険因子として重要な身体的要因に痛みと身体機能の低下が挙げられる |
(3) |
がん患者の抑うつ発現における防御要因として,医療者や家族からのサポートが重要である |
(4) |
がん患者にみられる大うつ病は一般的には重症のものが多く,精神病像を伴う症例もまれではない |
(5) |
がん患者の抑うつ発現に痛みが主要な役割を果たしている場合,まずは除痛を優先し,その後に,抑うつの再評価を行う |
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問題4 |
抑うつの診断について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
抑うつ気分が存在しない場合は,大うつ病ではない |
(2) |
米国精神医学会(DSM-IV)の大うつ病診断基準として提唱されている診断項目は8つである |
(3) |
がん患者の大うつ病を操作的診断基準(たとえば,DSM-IV)を用いて診断する場合,最も問題となるのは睡眠障害,倦怠感などの身体症状である |
(4) |
罪責感や希死念慮の存在は,がん患者の大うつ病の診断に際して有用である |
(5) |
大うつ病診断基準に含まれる身体症状項目に関して,病因のいかんを問わず診断基準に算入する診断アプローチを採用した場合,進行がん患者の大うつ病の有病率は50~80%で ある |
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問題5 |
抑うつの薬物療法について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
がんに罹患するという明確なライフイベント後に生じた大うつ病に対して薬物治療は有用ではない |
(2) |
多くの抗うつ薬は作用発現までに2~4週間を要することが多い |
(3) |
精神刺激薬(例:メチルフェニデート)は抗うつ作用を有し,作用発現が早い |
(4) |
おのおのの抗うつ薬で効果は著しく異なり,現在では三環系抗うつ薬などの従来薬に比べ,選択セロトニン再取り込み阻害薬が最も強力な抗うつ薬であることが示されている |
(5) |
頻度の高い抗うつ薬の有害事象として,三環系抗うつ薬における嘔気・嘔吐,選択的セロトニン再取り込み阻害薬における便秘,口渇などが知られている |
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問題6 |
抑うつの非薬物療法について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
終末期における支持的精神療法,カウンセリングにおいてもっとも重要なことは,患者自身に死を受容させることである |
(2) |
進行・終末期がん患者に対する精神療法の中で最も有用な治療技法は,精神分析理論に基づき内面の深い洞察を指向する力動的精神療法(psychodynamicpsychotherapy)である |
(3) |
よい精神療法を提供する大前提としては,患者と医療者の良好な信頼関係の形成が必須である |
(4) |
心理教育的介入の目標は,正しい医学的な知識を提供することにより,不確実な知識や知識の欠如に起因して生じている不安感,抑うつ感や絶望感を改善することにある |
(5) |
がん患者に病状の否認,退行がみられた場合は,できるだけ早期に精神療法的介入を行い,それらを消失させることが重要である |
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問題7 |
症状マネジメントに必要な薬物の薬理学的特徴について正しいものはどれか,3つ選べ |
(1) |
一般的に,薬物効果に影響を与える薬物の相互作用としては,薬物の感受性などに変化を与える薬力学的相互作用(pharmacodynamicdruginteraction)と薬物の体内動態に変化を与える薬物動態学的相互作用(pharmacokineticdruginteraction)とがある |
(2) |
がん患者は高齢者が多いので,抗うつ薬の投与量も少量から開始する必要がある |
(3) |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるミルナシプランは代謝酵素CYP2D6を阻害する |
(4) |
ある選択的セロトニン再取り込み阻害薬が無効であった場合には,他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬も多くの場合無効である |
(5) |
三環系抗うつ薬は,重篤な心臓への有害事象を認めることがあるため,投与前に心電図を確認しておくことが望ましい |
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問題8 |
希死念慮の疫学と病態について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
がん患者の自殺率は一般人口に比べて高く,およそ10~20倍である |
(2) |
がん患者の自殺の最大の原因の1つとして大うつ病が挙げられる |
(3) |
終末期がん患者の10%から20%程度に希死念慮を有する患者や安楽死を望む患者が存在する |
(4) |
緩和ケアを受けている終末期がん患者の希死念慮の背景に存在する最も重要な要因は痛みである |
(5) |
終末期がん患者の希死念慮の多くは合理的で治療が不要なものである |
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問題9 |
希死念慮の診断と治療について正しいものはどれか,2つ選べ |
(1) |
がん患者と希死念慮について話し合うことは,患者の希死念慮を増悪させたり,自殺の危険を高めるので,可能なかぎり避けることが望まれる |
(2) |
希死念慮の評価を行う際には認知機能の評価も行う必要がある |
(3) |
がん患者の希死念慮の評価を適切に行うためには,身体的側面,心理社会的側面,実存的側面など多次元的かつ包括的に行う必要がある |
(4) |
がん患者に希死念慮が認められた場合には,できるだけ早期に抗うつ薬で治療を開始する |
(5) |
希死念慮を有するがん患者とのコミュニケーションに際しては,医療スタッフの宗教観や人生観などに基づき,希死念慮を持つべきではないことを説くことが有用である |
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〔症例問題〕
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〔症例〕 53歳,男性.半年前に手術で切除した肺がんが再発.多発骨転移あり.骨転移による疼痛緩和目的で約2ヵ月前に入院.安静時の痛みは緩和されたが,体動時の痛みのため日中もベッド上で過ごすことを余儀なくされていた.入院生活が長びき,食欲低下,倦怠感,不眠が出現し,次第に口数も少なくなってきていた.最近は,好きでよく読んでいたという時代小説を読んでいる姿をみかけることもなくなっており,家族もふさぎこんだ状態を心配しているものの,病気が治らない状態であれば自然なことなのかもしれないと感じていた.睡眠薬で客観的には不眠は改善しているように見えたものの睡眠に対する満足感は乏しく,また食欲低下や倦怠感に対してステロイドを使用するも無効であった. あなたが,この患者さんを訪床したある夕方,「一生懸命やってくださる看護婦さんや先生に申し訳なくて言えませんでしたが,皆に迷惑をかけるばかりで,生きていてもつらいばかりです.早く死んでしまいたいのです.もしできることなら,早く逝かせていただきたいのですが…」との申し出があった.あなたが,何がつらいのかと尋ねると,「こんな状態で生きている自分には価値がないのではないかと思うのです.とにかく気持ちがつらくて…」と涙を流しながら答えた. |
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問題1 |
この患者の希死念慮の原因として最も考えやすいものはどれか,1つ選べ |
(1) |
痛み |
(2) |
うつ状態(大うつ病) |
(3) |
死の恐怖 |
(4) |
正常な反応であり,原因となるものは特にない |
(5) |
高カルシウム血症 |
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問題2 |
この患者は希死念慮を述べているが,これに対して適切ではない初期対応は以下のうちどれか,2つ選べ |
(1) |
患者の抱いている希死念慮の程度や背景について尋ねる |
(2) |
わが国では安楽死が違法であることを説明し,安楽死は提供できないことを率直に説明する |
(3) |
話題を死の話題から他の話題にそれとなく変える |
(4) |
患者の病気に対する理解を確認する |
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