■Module8■ 腹水
|
〔一般問題〕
|
問題1 |
進行期がん患者の腹水について正しくないものはどれか |
(1) |
卵巣がん患者の約60%に腹水が生じる |
(2) |
末期がん患者の90%に腹水が生じる |
(3) |
腹水の原因の1つとして門脈圧亢進症が挙げられる |
(4) |
腹部膨満感,経口摂取困難などの症状の原因になる |
(5) |
腹水の治療において確立されている治療は数少ない |
|
|
問題2 |
がん患者の腹水の診断について適切な組み合わせを選べ |
(1) |
少量の腹水の存在診断検査としては腹部超音波検査が第一選択となる |
(2) |
血性腹水の場合,CTにおいて漿液性の腹水と比して高いCT値を示すことが多い |
(3) |
大量に貯留する場合,腹部単純レントゲン写真によって診断することができる |
(4) |
腹水が確認された場合,がん性か否かを確認するためにすべての患者に腹腔試験穿刺を行うことが必須である |
(5) |
約3 l以上の腹水が貯留した時点ではじめて身体所見で診断可能となる |
a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5) d(2),(3),(4) e(3),(4),(5) |
|
問題3 |
腹水に対する薬物療法に関する下記の記述のうち正しい組み合わせを選べ |
(1) |
腹水に対する第一選択薬は利尿剤である |
(2) |
利尿剤によって約40%の患者の腹水が改善する |
(3) |
どのような腹水が利尿剤に反応するかを選別できる明確な基準がある |
(4) |
フロセミドを使用するのが一般的である |
(5) |
利尿剤の投与中には,脱水・電解質異常に対する注意が必要である |
a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5) d(2),(3),(4) e(3),(4),(5) |
|
問題4 |
がん性腹水に対する穿刺排液療法についての記述のうち正しいものの組み合わせを選べ |
(1) |
腹水穿刺排液療法は腹部膨満感,嘔気・嘔吐などの症状に対して約90%の患者に有効である |
(2) |
血圧低下や循環不全を予防するために,腹水穿刺排液を行う際には同時に輸液を行うことが原則である |
(3) |
腹水排液施行中にアルブミンを投与すると,血圧低下や腎前性腎不全,低ナトリウム血症などの合併症を軽減させる |
(4) |
1回の穿刺で3l以上の排液を行うことは危険を伴うため,行うべきでない |
(5) |
繰り返して腹腔穿刺が必要な場合は,腹腔静脈シャントの適応について検討する |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
|
問題5 |
次の腹腔-静脈シャント術およびアルブミン投与についての記述のうち誤っている組み合わせはどれか |
(1) |
肝硬変において腹水穿刺排液と人血清アルブミン投与の組み合わせと,腹水濾過濃縮再静注の有効性はほぼ同等である |
(2) |
腹腔-静脈シャントの代表的なものにLeVeenシャントとDenverシャントがある |
(3) |
腹腔-静脈シャントの生命に関わる合併症として肺塞栓,肺水腫,DIC(播種性血管内凝固)が挙げられる |
(4) |
腹腔-静脈シャントの禁忌としては,心不全,肝不全,門脈圧亢進症の存在,高タンパク性の腹水(腹水中アルブミン濃度4.5g/dl以上)が挙げられる |
(5) |
腹腔-静脈シャントはがんの原発巣が消化管である場合,他のがんに比べてその有効性が高い |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
|
〔症例問題〕
|
〔症例〕 70歳,女性,2年前に発症した胃がん.胃全摘術時,すでに肝転移および腹膜播種がみられた.標準的な化学療法3クールが行われたが,PD(progressivedisease)であり,緩和ケアを選択して外来を独歩で初診した.前医での治療中より軽度の浮腫および腹水の貯留が中等度(約3l程度と推定)あり,腹水の穿刺細胞診にてがん細胞が認められている. 前医にてすでにスピロノラクトン50mgの内服が開始されていた.1週間前の採血の結果では軽度の低アルブミン血症(Alb2.7g/dl)と貧血(Hb10.8g/dl)を認めるほか,血液検査データは正常であった.患者は外来時にあなたに腹部膨満感(常に存在して,みぞおちの辺りが重苦しい)と食欲不振(おなかは減るが,食べるとすぐにお腹一杯になってしまう)を訴えた. |
|
問題1 |
この患者の症状に対してまず考慮するのはどれか,適切な組み合わせを選べ |
(1) |
スピロノラクトンの増量 |
(2) |
フロセミドの投与 |
(3) |
腹水穿刺排液 |
(4) |
人血清アルブミンの投与 |
(5) |
腹水濾過濃縮再静注 |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
|
〔症例〕(つづき) 上記の状況での初期対応によって腹水が軽減し,状態の安定が得られていたが,1ヵ月後再び腹水の増悪がみられ,入院することとなった.腹部の膨満感のために,何をするのも困難になり,両下肢の浮腫のため歩行も困難になっており,ほぼ寝たきり(PS3~4)の状態である. 腹水穿刺排液によって症状は一時軽快するも,腹水の再貯留のためおよそ5日ごとに穿刺を繰り返す状況である.心不全や腎不全は認めていないが,血圧が94/60mmHg(普段は収縮期血圧120台)と低下してきている.患者のADLは低下し,食欲もなく,昨日から食事摂取量は激減した.予後はPS(performancestatus)や臨床的予後予測,予後予測スケールから短めの週単位と推定される.この状況で,患者は腹部の膨満感を訴え,再び腹水穿刺排液を希望した. |
|
問題2 |
より適切と思われる対応を2つ選べ |
(1) |
状態をよく説明し,利尿剤の投与のみにて経過観察する |
(2) |
バイタルサインを観察しながら2,000mlの腹水穿刺排液を施行する |
(3) |
輸液を併用しながら3,000mlの腹水穿刺排液を施行する |
(4) |
腹腔-静脈シャント術を施行する |
(5) |
腹腔内化学療法を行う |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |