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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケア専従医のための自己学習プログラム
■発刊にあたって■

近年,ホスピス・緩和ケアをめぐる社会の動きは,めまぐるしく変化している.特にこれか らの数十年間で起こる未曾有の高齢化がその一つとして挙げられる.いわゆる団塊の世代の老 化により,現在,年間約100万人である国民総死亡が2020年には1.5倍の150万人となり,が ん死亡者数は約50万人になると推定される.加えて,わが国の医療保険制度も厳しい財政状態 におかれ,高齢化社会をふまえて大きな転換期にきている.本年(2006年)4月に行われた医 療法,医療保険制度および介護保険制度の改正はその第一歩ということができ,今後ますます 治癒が困難な疾患,つまりがんや難病,脆弱高齢者などの医療のあり方が問われることとなる であろう.
一方,ホスピス・緩和ケアの医療の現場をみてみると,ホスピス・緩和ケア病棟の施設数は 全国で157施設2,982床(2006年6月1日現在)と増加し,また一般病院やがん専門病院,大 学病院において緩和ケアコンサルテーション診療も活発化している.しかしながら,これらの 施設においてはホスピス・緩和ケア専従医の慢性的な不足が続いている.また,これら緩和医 療の専従医師に対するトレーニングのシステムや専門医制度は確立されておらず,その質が問 われ始めている.
この問題に対する一つの対応策として,(財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団では,ホ スピス・緩和ケア専従医として働いている医師に対し,自己学習を通じてホスピス・緩和ケア に必要な能力を修得できるようホスピス・緩和ケア専従医のための自己学習プログラムを作成 した.このプログラムには疼痛,呼吸困難といった身体症状のみが取り扱われているのではな く,精神症状,家族の問題,グリーフケア,臨死期の問題などホスピス・緩和ケアの実践に必 要な多面的な問題が扱われており,単に医学的な知識だけではなく,考え方や態度,チームア プローチの仕方などが取り上げられている.したがって,本プログラムは現在ホスピス・緩和 ケアを実践している医師だけにとどまらず,これから専従医を目指す医師や,ホスピスケア認 定看護師をはじめとする専門・認定看護師の学習の一助にもなると考えている.
本プログラムの実践を通じて多くの医師や看護師のホスピス・緩和ケアにおける能力が向上 し,ひいては患者・家族のQOLが向上することを願ってやまない.

2006年6月
(財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
理事長 柏木 哲夫