■第3次改訂にあたって■ 本マニュアルの初版「がん末期医療に関するケアのマニュアル」〔厚生省(現:厚生労働省)・日本医師会〕が全国に配布されたのは平成元年であった。国が編集するこの領域のマニュアルとしては世界で4番目のものであり、その結果、医療従事者の患者ケア向上への関心を大いに向上させ、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の改善に大きく貢献することとなった。それから今日までの間、この疼痛緩和領域における国の内外の臨床実践と研究の双方は目覚しく進歩し、その過程でがん末期ケアは、がんのみならずエイズ、その他の慢性経過をとる疾患に苦しむ患者の全経過を対象とする「緩和ケア」へと発展した。 平成14年、平成17年には、これまでの経緯を踏まえ、わが国の緩和ケアで指導的な役割を担う第2世代の研究者、実践者、教育者の協力の下に本マニュアルが改訂されるに至った。 がんの発生数と死亡者数の増加が続いている今日、入院、在宅を問わず、がん患者を心身両面の苦しみから解放する緩和ケアの実践は医療において必要不可欠であり、平成18年制定のがん対策基本法では、早期からの緩和ケアの実施の重要性が示された。これらの動向を踏まえ、施設内ケア、在宅ケアの双方に視点をあて、今回、第3次改訂を行うこととした。 このマニュアルががん医療を担っているすべての医師、看護師、薬剤師、保健師、その他の医療従事者によって身近な手引き書として活用されることを願っている。第3次改訂に対しても日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団(理事長:柏木哲夫)の助成を得た。深く感謝したい。 平成22年9月 「がん緩和ケアに関するマニュアル」改訂委員会委員長
武 田 文 和 |
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