■第2章■ がん患者の特徴 がんの診断や治療開始前後の時期から、がん患者は身体的苦しみや精神的苦しみを体験する。病状の進行に伴い苦しみの程度、種類、頻度は大幅に増し、日常生活も障害され、緩和ケアの必要性が増大する。 I.身体的苦しみ
精神的苦しみへの対応では、不安、抑うつ、せん妄の診断と対応がとくに大切である(第6章を参照)。不安は、進行がんや終末期がんの患者では臨床的に気づかれにくいことが多い。不安によって起こる身体的症状が、疾患由来の身体的症状と鑑別しにくいからであり、正常範囲内の不安と病的な不安との境界が不明瞭なこともある。患者は病状の変化に伴い、心身の不安定さや将来の不確実性さなど多くの問題にも直面する。 抑うつは悲嘆との鑑別がむずかしいことがある。不治の疾患を持つ患者には、絶望感、無力感、死の願望などがみられることがあり、やはり抑うつとの鑑別がむずかしい。苦悩の当然の結果であると考え、医療従事者だけでなく患者も抑うつ的な気分は仕方がないと諦めていることが少なくない。治療可能な抑うつが見逃されている患者や、身体的諸症状のマネジメントが不十分なために抑うつに陥っている患者もいる。 せん妄は急な発症を示し、短時間で増悪する全般的な認知障害を特徴とし、身体的異常の強い患者に起こる精神症状の一つである。せん妄が出現すると、患者のQOLと尊厳は著しく低下し、家族の苦悩を増大させることになる。せん妄の治療は、その原因の究明と除去であり、投与中の薬を再検討する必要もある。 III.日常生活の障害 |
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