ホスピスの家族会で、ご主人を看取られたあるご夫人が私に次のように話して下さいました。 「主人を看取ってからほんとに寂しくなり、しばらくは何をするにもおっくうで、気分も沈み、うつ状態に陥りました。でも、私慌てませんでした。こんな心境になるのは当たり前と思えたからです。主人がまだ元気な頃、書店でみつけた悲嘆のプロセスに関する本を読んでいたからです。主人の死後、つらくなってもう一度その本を読んでみました。本の中味はすべて私のことが書いてあるという印象でした。誰もがたどるプロセスで特に異常なことではないとわかった時、とにかく安心しました。時間だけが解決するのではないけれど、時間が経つにつれて、少しづつおちつくということがわかった時、心に余裕が生まれました。」 家族との別れはつらく悲しいことです。しかし、それは例外なく誰にでも訪れることです。このパンフレットが悲しみの中にある方々の何らかの支えになるよう心から願っています。
2006年8月 (財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団 理事長 柏木 哲夫
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