(公財)ホスピス財団 メールマガジン「今月のお便り」 vol.29
今月のコラム
 
福地 智巴氏

静岡県立
静岡がんセンター
ホスピス財団事業委員
福地 智巴
   夏の風物詩と言えば『花火』。多摩川沿いに住んでいると、夏に数回は土手から近隣の花火大会を鑑賞する機会に恵まれる。人ごみを好まない私だが、今年はあえて土手に出て花火を鑑賞することにした。手ごろな場所を鑑賞ポイントに決め、打ち上げられていく花火の多様さ、美しさ、儚さに目を奪われていると、一組の家族が私の前の場所を鑑賞ポイントに決めたようだった。車いすに乗った女性の目線からもっとも花火が見えるように、その女性の息子さんや娘さんだろうか、微妙に車いすの位置を移動させながら、やっと落ち着ける位置を得たようだった。花火が空を彩るたびに、娘さんらしき人(ここでは仮に娘さんとしておく)が「見える?」「きれいだね」と声をかけていたが、車いすの女性は身体を斜めに傾けたまま、声を出すことも身体を動かすこともなかった。後方にいる私からは、花火にも娘さんにも反応しているようにも、していないように見えた。
 ふと、これまで勤務してきた各医療機関の緩和ケア病棟での納涼会を思い出した。スタッフと一緒に浴衣を着て、患者さんやご家族と一緒に楽しんだ花火と火薬の匂い。煙にむせながら、『今』だからこそ一緒に楽しめる花火なのだという想いが暗黙の了解だった病棟の庭での小さな花火大会の記憶。
 目の前の車いすの女性は、今、どんな想いで花火を感じているのだろう...。そんなことを想っていると、しばらく空が静かになった。すると、私の後方にいた小さな女の子が「終わっちゃったの?」とお母さんに訊ねる声がした。お母さんの「まだよ」という返事に続くように花火があがり始めた途端、小さな女の子が「がんばれー、がんばれー」と大きな声を発した。花火がきれいに咲くように叫んだのか、一瞬の命が少しでも続くようにと叫んだのか、ただ応援したくなったのか...。その小さな女の子が何に向かって「がんばれー」と言ったのかは女の子にしか分からない。もしかしたら思わず声が出てしまっただけかもしれない。けれど、その「がんばれー」の声に、私の前方にいた車いすの女性の身体は確実に反応した。私にはそれがはっきりと分かった。女の子の声に反応したのか、言葉に反応したのか、言葉に込められている想いに反応したのかは分からないけれど。
 土手を歩きながらの帰り道、花火大会の場面で、車いすの女性に対してホスピスケアは何にあたるのだろうと考えた。観る人を和ませる花火だろうか、見える位置を調整したり、「きれいね」と声をかける娘さんだろうか、美しく儚いものに「がんばれー」と叫んでいた小さな女の子だろうか、同じ時間と空間を共有していた鑑賞者の人々だろうか、それとも花火の背景にあった空だろうか。
 車いすの女性と小さな女の子と共有したひとときは、私には花火よりも鮮やかで余韻を残すギフトであった。
 
頁トップへ
ホスピス・緩和ケアフォーラム2016 in 各務原
 
ホスピス・緩和ケアフォーラム2016 in 各務原のチラシ  
■ 日時:2016年10月1日(土) 13時~15時30分
■ 場所:各務原市文化ホール
■ 特別講演:「地域でつなく緩和ケア」
■ 講師:渡邊 正氏(東海中央病院 名誉院長)
■ パネルディスカッション:「地域でがん患者を支えるために」
■ 参加費:無料
 
詳細をみる
 
 
頁トップへ
第9回Whole Person Careワークショップが開催されました
 
 好評のワークショップが8月27日(土)千里ライフサイエンスセンター(豊中市)で開催され  20名が参加されました。9時30分から19時30分と長丁場でしたが、皆様、日頃と異なる環境で、また、恒藤先生と安田先生のリーダーシップのもと、時間を忘れて楽しんで過ごされたようでした。
 
ホスピス・緩和ケアボランティア研修会の様子-1   ホスピス・緩和ケアボランティア研修会の様子-2
 
頁トップへ
『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中
 
新たな全人的ケアの表紙  
 「Whole Person Care:A New Paradigm for 21Century」(Springer 社 2011年)の日本語訳として『新たな全人的ケア:医療と教育のパラダイムシフト』を青海社より全国で発売中です。
 Whole Person Careとはカナダ、マギル大学医学部で開発された、新しいケアの概念であり、従来の考え方を根本的に変えるアプローチです。
 是非、ご一読ください。
 
詳細をみる
 
 
頁トップへ
Hutchinson 教授による『『新たな全人的ケア』 出版記念講演会
 
Hutchinson 教授による『新たな全人的ケア』出版記念講演会のご案内のチラシ    『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』の出版を記念してカナダのマギル大学のWhole Person Care プログラム責任者である Tom A Hutchinson 教授を招き Whole Person Care への理解を深めるための講演会を開催いたします。

【大阪会場】
 2016年11月26日(土)13時から17時
 千里ライフサイエンスセンター

【東京会場】
 2016年11月27日(日)13時から17時
 大手町ファーストスクエアカンファレンス

・逐次通訳あり
・参加費 無料
・定員 200名
 
詳細をみる
頁トップへ
Ellershaw 教授による講演会&シンポジウムのご案内
 
Ellershaw 教授による講演会&シンポジウムのチラシ  
 この度、ホスピス財団は設立15周年記念行事の一環として、Liverpool Care Pathwayを開発された英国リバプール大学のEllershaw 教授をお招きし、講演会&シンポジウムを、第40回日本死の臨床研究会年次大会(札幌)に合わせて開催いたします。皆様のご参加をお待ちいたします。

■ 日 時:2016年10月7日(金)13:30~17:30
■ 会 場:札幌コンベンションセンター 中ホール
■ 講 演:死にゆく患者のケアをいかに改善させるか(同時通訳付)
■ 対 象:医療関係者
■ 参加費:無料
■ 定 員:300名(事前申し込み制:先着順)
 
詳細をみる
 
頁トップへ
J-HOPE3が刊行されました
 
ホスピス財団ニュース30号の表紙  
 世界的にも高く評価されている「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究3」 (J-HOPE3)が刊行されました。
 
詳細をみる
 
頁トップへ
ホスピス・緩和ケア白書2016が発売中です
 
ホスピス緩和ケア白書2016の表紙  
 緩和ケアにおける緩和デイケア・がん患者サロン・デイホスピス」を特集テーマにホスピス緩和ケア白書2016が完成いたしました。
 
詳細をみる
 
頁トップへ
『旅立ちのとき・・寄りそうあなたへのガイドブック・・』が発行されました
 
旅立ちのときの表紙  
 旧『旅立ち』が絶版となり、多方面から再販の要望が多く寄せられていましたが、『旅立ちのとき・・寄りそうあなたへのガイドブック』が出版されています。
 本冊子が、旧版同様、多くの人に読まれ、死という現実に目をそむけず、死を受け入れる一助になり、人生の最後に寄りそう方々に用いられることを願っております。
 ホームページでも閲覧可能ですが、ご希望の方には1冊200円(送料込)で送付いたします。
 
詳細をみる
 
頁トップへ
個人賛助会費と一般寄附が、オンライン(クレジット決済)でも支払いが出来ます
 
決済サービスのwebページの一部    ホスピス財団では、新しく CANPAN決済システムを導入し、ご自宅のパソコンを使用して賛助会費(個人)と一般寄附の支払いが可能にです。郵便局や銀行へ出向く必要がなく手軽に利用できますので、是非、ご活用ください。詳細はホームページを参照してください。
 
詳細をみる
頁トップへ
★8月号(VOL.28)の訂正とお詫び
 
 「今月のお便り8月号」に掲載しました、ホスピス・緩和ケアボランティア研修会で講師の田村里子先生のお名前を間違って掲載しました。訂正とともにお詫びいたします。
 
頁トップへ
情報コーナー
ヴォーリス記念病院ホスピス希望館 10周年記念講演会
 
ヴォーリス記念病院ホスピス希望館 10周年記念講演会のチラシ  
■ 日時:10月23日(日) 14:00 開演
■ 会場:G-GETしが(近江八幡南口から徒歩10分)
 
詳細をみる
 
 
書評
 
「がん 4000年の歴史 上巻」の表紙  
海部宣男・評 (毎日新聞8月14日)
「がん 4000年の歴史 上・下」 ハヤカワNF文庫  各994円
 
詳細をみる
 
 
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介
 
・山谷を終の棲家とした通称「山谷玉三郎」さんが逝かれた。山谷は、流れ着いたふるさと、労働者を舞で励まし、最期は酒が友達、踊りが麻酔という彼の壮絶な波乱万丈の人生を追った記事
(毎日新聞 2016/8/28 掲載)

・在宅死の比率の高い、横須賀市で、在宅医療の充実に取り組む現場を取材した記事
(毎日新聞 2016/8/21 掲載)

・高齢者介護施設での看取りの課題、救急車を呼ぶべきか?また、最期まで住み慣れた地域にいたいとの希望への対応、そして救急車を呼ぶべきかどうかとの疑問・・・高齢者の救急搬送が増えているが、救命か看取りかという複雑な問題を抱えていることを紹介した「救急と看取り」をテーマにして連載記事の後編
(読売新聞 2016/8/7・14・21 掲載)

・グリーフケアの学びや、デスカフェの活動を通して、死と悲しみに向きあう心構えなどを紹介した記事
(毎日新聞 2016/8/20 掲載)

・75歳以上の高齢者のがんの治療や検診のあり方を紹介した記事
(読売新聞 2016/8/15 連載)

・AYA世代(思春期・若年成人)のがん患者を悩みや、その方をサポートする体制、活動する人々を紹介した記事
(読売新聞 2016/8/10 夕刊掲載)

・ドクター元ちゃんがんになる。
金沢赤十字病院副院長の西村 元一医師が、自らのがん体験を綴った連載記事 4回目 “闘病支えるチーム医療”
(毎日新聞 2016/8/7 掲載)

詳細をみる
頁トップへ
■このメールマガジンは、ホスピス財団の賛助会員をはじめ、ホスピス・緩和ケア医療従事者の皆様にお送りしております。また、お知り合いの方々にも転送していただけると幸いです
個人情報の取り扱いについて
■メールマガジンの受信の停止は、こちら からお願いします。
発行:ホスピス財団(公益財団法人 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団)
〒530-0013 大阪市北区茶屋町2-30
TEL:06-6375-7255 FAX:06-6375-7245
mail:hospat@gol.com URL:https://www.hospat.org/
Copyright(c)2014 Japan Hospice Palliative Care Foundation All Rights Reserved.