ホスピス財団 理事長 柏木哲夫 |
ホスピス財団 設立15周年を迎えて(ホスピス財団ニュース30号より転載) “ホスピス・緩和ケアの質の向上”をめざして、2000年12月に設立された当財団は、研究・調査事業、人材育成事業、普及・広報事業、および国際交流事業という4分野において、多岐に亘る事業を推進し、ここに設立15周年を迎えました。この間、賛助会員の皆様を始め、関係団体、関係諸氏のご支援とご協力いただいたことに心より感謝申し上げます。 この15年の間にホスピス・緩和ケアを取り巻く環境は、大きく様変わりいたしました。ホスピス・緩和ケアに関する認知も高まり、ホスピス・緩和ケア病棟数は、設立当初100に満たなかったのが、今や350施設、7100床を超えました。一方では、2025年問題、すなわち団塊の世代が死を迎えるであろう年には、病院で最期を迎えることは難しいと予測され、在宅ホスピスの拡充や、高齢者介護施設等でのホスピスケアと看取りの必要性が高まりつつあります。 その意味では、当財団の使命である“ホスピス・緩和ケアの質の向上”は、その対象をホスピス・緩和ケア病棟に留めることなく、さらに範囲を拡げることが必要な時代となりました。このためには、人材育成が急務であり、従来に増して、そのニーズに答えなければなりません。同時に質の高い、オリジナリティのある調査・研究を継続して行い、患者さんとその家族のQOL向上にも力を注ぎたく考えております。今回出版しました「新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト」が、すべての医療従事者の礎となること、また国際的にも高く評価されている「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究3(J-HOPE3)」が、広くホスピス・緩和ケアの質の向上に貢献できることを願っております。 私は常々、事業を為すためには、3つのMが必要であると考えております。MISSION、MONEY、 MANAGEMENTです。MISSION(使命)は前述のように、ホスピス・緩和ケアの質の向上です。MISSION遂行のためにはMONEY(資金)が必要であり、皆様からの賛助会費と寄付がその大きな財源です。MANAGEMENT(運営)は理事会、評議員会および事業委員会がその任に当たっております。 これらの3つのMはどれが欠けても事業が成り立たたないものです。15周年という、一つの節目を迎え当財団は、この3Mを念頭におき、時代の要請に答えつつ、「その人らしい生を最期まで支えるホスピスケアへの貢献」を理念として、これからも歩んでいきたいと願っております。皆様のさらなるご理解とご支援をお願い申し上げます。 |
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今月のコラム |
国立がん研究センター・ 東病院 精神腫瘍科・科長 ホスピス財団事業委員 小川 朝生 |
この1,2年急に「緩和ケア」とならんで、「エンドオブライフ・ケア」「サポーティブケア」「地域包括ケア」などが議論されるようになってきました。緩和ケアも「早期緩和ケア」「診断時の緩和ケア」など分かれて議論されます。一方で、どれもが「想いに沿って・・・」とか「〇〇で過ごす事を決めて・・・」とか議論され、「意思決定支援」というものをしなければならない、というところはかなり共通しているようです。 「意思決定支援」という言葉があちこちで使われています。しかし、その意図する内容にはずいぶんと幅があるようです。たとえば、「意思決定支援」を「選択が難しく心理的な負担が大きい場面で、悩む患者さんの想いに寄り添う」ことを想像する医療者がいます(おそらく、日本ではこのイメージが非常に強そうです)。一方、「患者さんの理解を高める」ことを考える方もいます。「リスクとベネフィットを比較勘案し、最善の手段を選ぶ」という選択をする技術を思い浮かべる方もいます(このような合理的判断を下す作業を支援する意味合いは海外では強そうです)。情緒的な支援にしても、理性的な支援にしても、「意思決定支援」は難しいテーマであるのはたしかです。 しかし、最近コンサルテーション活動をしつつ感じるのは、「意思決定支援が難しい」と医療者は言うにもかかわらず、なぜか、「患者さんはどう理解しているのか」「今後どのようにしたいと思っているのか」など、患者さんの思っていることを尋ね、確認することをしない、し忘れている、ということです。医療者が難しい、難しいとある意味勝手に考えている、独り相撲を取っていることが多くないでしょうか。背景には、医師や看護師の業務量が増え続けていること、たとえば在院日数の短縮化や業務の標準化を目指したルーチン作業の増加、電子カルテへの入力作業などがあるのかもしれません。 「患者の心が開くのはきまぐれでしかも一時である。それは夜明けの一瞬かもしれない」という句があります。入院が長かった頃には、普段の病棟生活の中で、何気なく語られていた話も、外来治療に移行した今では、3分診療や外来待合の時に意識して確認という作業をしなければならなくなっている、「意思決定支援」という言葉がそのような構えを映しているとしたら、私たちは、患者さんご家族と何気に言葉を交わすゆとりをどこかに忘れてきていないでしょうか、我が身も含めて気になっています。 |
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柏木理事長がヘルシーソサエティ賞を受賞されました | |||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 近日発売 |
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ホスピス財団ニュース 30号(2016年4月)が発行されました | ||||||
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J-HOPE3が刊行されました | ||||||
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ホスピス財団15周年記念講演会 | |||||||
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第10回通常理事会が開催されました | |
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ホスピス財団の2016年度事業の紹介(4回シリーズ) その1 | |||||||||||||||||
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Ellershaw 教授による講演会&シンポジウムのご案内 | |||||||
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第9回 Whole Person Careワークショップのご案内 | |||||||
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『旅立ちのとき・・寄りそうあなたへのガイドブック・・』が発行されました。 | |||||||
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個人賛助会費と一般寄附が、オンライン(クレジット決済)でも支払いが出来るようになりました | ||||
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ホスピス財団の新パンフレットをお分けしております |
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・シリーズ「がん社会はどこへ」第5部 ―自分らしく生きる― 打ち明けられぬ性の悩みや、乳がんサーバイバー、緩和デイケアをトピックスに掲げた3回連続記事 (毎日新聞 2016/3/24~26 掲載) |
・国内雄一の小児専門ホスピス「淀川キリスト教病院・子どもホスピス」が設立されて3年半が
経過したが、これまでの働きやこれからの抱負を、こどもホスピス病院長の鍋谷まこと氏にインタビューした記事
(読売新聞 2016/3/17 夕刊掲載) |
・東日本大震災後、5年に際し、宗教学者である山折哲男氏が、日本人の価値観の転換を提唱し、その想いを綴った特集記事
(毎日新聞 2016/3/14 掲載) |
・福島での子どもの甲状腺検査と結果、またその解析への意見の相違などを総合的に紹介した記事
(毎日新聞 2016/3/7 掲載) |
・乳がんの診断、治療から乳房再建まで、垣根を越えて一括して行う「ブレストセンター」が設置される動きが広まってきたことを紹介した記事
(読売新聞 2016/3/5 掲載) |
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