今月のコラム |
メアリー・エイケンヘッド(Mary Aikenhead)の足跡を訪ねて ・・・アイルランド・ダブリン 「Our Lady’s Hospice」訪問・・・
ホスピス財団事務局長
大谷 正身
本年9月、ホスピス4団体共催で「日本のホスピス50年記念コンサート&シンポジウム」が開催される。1973年に淀川キリスト教病院で、初めてホスピスケアとしてのチーム医療(Organized Care of Dying Patient: OCDP)が開始され、1981年には聖隷三方原病院でホスピス病棟が開設されたことはよく知られている。 一方、世界に目を向ければ、ホスピスの歴史は古く、1835年アイルランド、ダブリンで、愛の女子修道会(Religious Sisters of Charity)によって設立された聖ヴィンセント病院(St. Vincent's Hospital)にまでさかのぼる。そしてこの設立に生涯を賭して貢献したのがメアリー・エイケンヘッド(Mary Aikenhead)修道女であった。 メアリー・エイケンヘッド(1787~1858)については、名著「ホスピスへの遠い道」岡村昭彦著に詳しいが、修道女であった彼女は、篤い信仰心から、貧しさのため医療を受けられない人々が年齢にも信条にも関係なく診てもらえる病院を作りたいとの願いを持ち、種々の困難と労苦の末、この聖ヴィンセント病院設立に至った。当時のアイルランドは英国の支配下にあり国民は貧困に苦しめられていたが、さらに1845年から3年間のジャガイモ不作による大飢饉のため、多くの人が飢えで命を落とし,また路上で行き倒れる人も多い状態であった。メアリー・エイケンヘッドは何とかこの人々の最期を看取りたいとの思いを、修道会の後継者たちに託し、やがて彼女のこの強い意志を引き継いだ愛の女子修道会は、1879年ダブリン郊外のハロルド・クロスの地に「Our Lady’s Hospice」として新たなホスピスを設立し現在へ引き継がれている。 さらに愛の女子修道会は1906年には現在ロンドンにある聖ヨセフホスピスの創立へと繋がり、近代ホスピスの母と言われる、シシリーソンダース女史は、このロンドンの聖ヨセフホスピスで学び、セント・クリストファー・ホスピスを設立したのである。 この度(2024年6月)機会あって、ダブリン郊外ハロルド・クロスの「Our Lady’s Hospice」を訪ねることができた。ダブリン市内からバスで30分ほどの静かな住宅地に、平屋建ての広大なスペースに最新のホスピス病棟をはじめ、高齢者介護施設、在宅ホスピス支援部門など、ホスピスケアに必要なほとんどの施設、設備が整えられていた。
また創立当初からのチャペルはそのまま残され、145年の歴史を感じさせられた。事務長Steven McDermott 氏の案内によってホスピス病棟、ダイニングルーム、植物園、温室などそのすべてを案内していただいたが、驚いたのは、本格的はBarが備えられていたことであった。 (週3日稼働)
また敷地内にメアリー・エイケンヘッド記念館があるが、当日は閉館中で見学できなかったのが残念であった。約1時間の見学ではあったが、およそ200年前にメアリー・エイケンヘッドという一人の女性の情熱から、現在の素晴らしい病棟ができていること、 そしてアイルランド・ダブリンで始まったホスピスケアが、世界に拡がり、この日本にも引き継がれ現在に至っている事を感慨深く思わされた。そして彼女の意思であった『とりわけ思いやりと優しさを必要としている人には最大の敬意を払うこと』ということばが、これからもホスピスケアとして引き継がれていくことを願いつつハロルド・クロスを後にした。
McDermott 氏から伺った病院の概要は以下の通りであるが、詳細はOur Lady’s Hospiceのホームページを参照。 Our Lady’s Hospice & Care Services (OLH&CS) ・現在の病棟 2018年新築 ・ホスピス病棟 32床:すべて個室 / 高齢者介護施設 20床 ・緩和ケア医 5名(内2名はJunior Doctor: 日本の研修医に当たり、2年間交代で勤務) ・ボランティア 登録200名 常時20名程度が奉仕 ・植物園・温室の庭師は病院職員として雇用 ・平均入院期間3週間程度。18歳から高齢者まで年間約600名を受け入れている。 約400名は死亡退院、約200名は在宅ホスピスなどへ。 Home - Religious Sisters of Charity (rsccaritas.com) Mary Aikenhead - Religious Sisters of Charity (rsccaritas.com) |
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「日本のホスピス50年」記念コンサート&シンポジウムが開催されます | ||||
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ホスピス・緩和ケア白書2024が発行されました | ||||
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映画『明日香に生きる』のご案内 | |||
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『Whole Person Care 教育編』が好評発売中です | |||
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第31回 日本ホスピス在宅ケア研究会 全国大会in淡路島が 開催されます | |||
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ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
(記事のコピー等をご希望の方はホスピス財団事務局へご連絡ください。) |
・安楽死よりももっと知られるべき終末期の医療 あなたが誤解している「緩和ケア」 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之によるコラム。ホスピス緩和ケアに関する解説を多くの統計データを紹介して分かりやすく説明されている。以下のサイトを参照ください。 毎日新聞 医療プレミア (毎日新聞 2024/07/20 掲載) |
・医療ルネサンス「がん患者と心臓」 6回シリーズ がん治療が進歩し、長期に生存する患者が増える中、治療の副作用や後遺症を防ぐ重要性が増している。実際に心臓に影響を受けた患者さんとその対応を紹介した記事。 (読売新聞 2024/07/8〜15 連載) |
・「死」タブー視せず語ろう 「死」について考える若者グループ「さだまらないオバケ」の活動を紹介した記事。「死」について語るイベント「デス・スナック」を開催し、関連するグッズを開発、販売したりすることで「死」をタブー視ではなく若い時から考える機会を与えたいとの活動を行っている。 (読売新聞 2024/07/09 掲載) |
・喪失の悲しみ そっと寄り添う 能登地震で半年になるが、悲しみが続く遺族にどう寄り添えばいいのかを、グリーフケアを研究する 瀬藤乃理子さんにインタビューした記事。困りごとを聞き、優しく声掛けすることがポイント。 (読売新聞 2024/07/03 掲載) |
・こどもホスピス 中高生支援に注力 こどもホスピスは小学生や未就学児の利用が多いが、大阪市の「Tsurumiこどもホスピス」は 中学生以上も楽しめるように工夫している。例えば、海洋堂のプラモデル教室の参加や、魚の裁き方を習うプログラム、またカラオケルーム、パソコン室も新設した。 (読売新聞 2024/06/28 掲載) |
・メイク・ア・ウイッシュ 夢の実現が人生を変えた 難病を患った子どもの夢を叶える活動をしている「メイク・ア・ウイッシュ」の事務局長を長く勤めていた大野寿子さん(73)が、今年2月自ら末期ガンとなり最期の仕事として自著「メイク・ア・ウイッシュ 夢の実現が人生を変えた」を自費出版することとなった。大野さんは言う「病気の子どもは 自分のことでいっぱいいっぱいのはずです。でもみんな誰かの役に立ちたいと思い、心から他者の幸せを願っていました。 (毎日新聞 2024/06/17 掲載) Make-A-Wish Japan |
・散歩は生きがいを守る 79歳の幸さんは散歩の途中で急斜面から滑り落ちた。スマホで家族に助けを求めたが正確な場所が 把握できなかった。その時、幸さんがハーモニカを吹いて居場所が分かり救出された。以来、幸さんの 散歩はGPSで家族が確認できる範囲にとどめ、散歩を楽しんでいる。 (毎日新聞 2024/06/16 掲載) |
・認知症の人の外出・・・あしたへつなぐ —再び仕事に得た充実— 63歳の前田さんは、ある時から道が分からなくなり、それ以来引きこもり勝ちになった。しかし長女が障害福祉事務所マイwayサードプレイス(川崎市)に相談し、そこが運営しているコーヒー焙煎、販売会社に就職することが出来た。以来、前田さんの人生は大きく変わり社会とのつながりが実感できたと語っている。 (毎日新聞 2024/06/11 掲載) |
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