今月のコラム |
毎日新聞社との共催イベント(第1回)を終えて “「自分らしい死」とは・・・リアルな最後のプロセスを学ぶ” をタイトルに、去る5月12日(日)昭和女子大学を会場に、ホスピス財団と毎日新聞社との共催イベントがオンライン視聴も含めて実施された。 毎日新聞社のPR力もあり、会場は定員80名でほぼ満席となり、オンライン視聴は700名ほどの参加であった。 司会の滝野隆浩氏の適切なリードもあり登壇の先生方から多くも示唆ある提言がなされ、参加のみなさまの反応もとても良いと感じられた。また会場とオンライン参加者からの質問も多く出され盛況な会となった。講演を聞き、印象に残ったことを以下に要約した。 小川朝生氏 人は如何にして最後の迎えるかは、がん、心不全、認知症など症状によって異なる。がんは緩やかに下降し最後に急激に死を迎える。心不全などは浮き沈みがありながら死を迎えるなど様々である。また終末期には多くに人に“せん妄”(意識障害、妄想や幻覚など)が現れ、死ぬ瞬間は殆どの人はせん妄状態であることを理解すべきである。なお認知症の方はホスピス・緩和ケアで受け入れにくいとされているが、実際は認知症にも幅があり、8割程度の方は自分の意思を語ることができるので決して駄目という訳ではない。日本ではがんと認知症が別々に扱われているが、両方をしっかり支えるのがホスピス、緩和ケアであり、その人の生活を最後まで支え、不安を取り除くといいうのが本来の姿である。大切なことは、死のプロセルを知ることであり、死の直前では意思疎通が難しいため、延命の希望など自分の意思を早く伝えることが、自分らしい死を迎えるために必要なことである。 梅田 恵氏 多くの人は、最後を自宅で迎えたいが、実際には難しいと考えている。しかし看護師の立場から見ると、今は訪問医療・看護を活用すれば自宅療養も可能になりつつある。多くの場合、終末期になるとトイレに行けなくなる、食事がおいしくなくなる、外出が困難になるなど不具合で、やがて寝たきりになってしまう。最後は誰かの世話になるので、元気な内に自分をケアしてもらえるチームを作ることが必要であり、自身の願いや好み、思いを積極的に話しておくことが大切である。チーム作りは医療者だけでなくご家族、近所の方の力を借りることも考えるべきである。また自分らしく死ぬためには、自分にとって楽しいいことは何であるかなど、自身の思いをチームの人に伝えることが今の時代の生き方になると思う。 小谷みどり氏 最期のとき、自分が困ったときに誰を頼ればいいのかを考えて欲しい。世帯構造の変化や、超高齢化で家族を頼れる時代ではなくなった。自分のことを理解してくれる人を見つけなければならない。一方、死とは何かを考えると、肉体の死だけではなく文化的・社会的な死もあることを知って欲しい。お盆、お墓参りなどで故人を忍ぶのはその例である。しかし、生きていても社会的に死んでいる孤独な人もいる。良き死を迎えるためには、誰かと繋がって欲しいと思う。そして助けてくれる人を見つけて欲しい。そのためには、生きているときの人間関係が大切である。どう死にたいだけでなく、どう生きたいかを考えて欲しい。死の不安の一つであるがんの痛みは、緩和ケアにより、ほとんど解消されている、家族へ負担がかかるという心配も、家族以外に世話をしてれる人がいるなら安心できる時代である。やがて終末期を迎え何もできなくなるなら、今したいことを先延ばししないこと、ありがとうは先に言うこと、その積み重ねが死に向かって生きて行くことであると考える。
ホスピス財団事務局長
大谷 正身
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「日本のホスピス50年」記念コンサート&シンポジウムが開催されます | ||||
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ホスピス財団・毎日新聞共催シンポジウムが開催されました | |||
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ホスピス・緩和ケア白書2024が発行されました | ||||
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ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
(記事のコピー等をご希望の方はホスピス財団事務局へご連絡ください。) |
・がんの緩和ケアの実績調査 読売新聞社が全国の緩和ケアを行っている889施設を対象に2022年の実績を紹介している。 緩和ケアは、通院、入院、在宅で行われるが、通院患者を対象にした「緩和ケア外来」が重要視されている。これは自宅での生活と治療を両立させたい人が増えてきたことによる。 調査結果を含めて読売新聞社は「病院の実力2024 総合編」として発売されている。 (読売新聞 2024/05/15 掲載) |
・認知症のがん患者 対応に苦慮 高齢化に伴い、認知症と同時にがんを患う人も増えている。一方でがん診療を行っている病院の9割強が認知症患者の対応に困ったことがあると回答している。本人が治療の判断をできない、在宅での治療を支える家族がいないなどが困った点である。国立がんセンター東病院の小川朝生医師は 入院前後に認知症のスクリーニングテストをして、それにより対応を考えるなどの体制が必要であると強調されている。 (毎日新聞 2024/05/08 掲載) |
・真ん中にケア 豊かな社会・・・元モーレツ研究者は気付いた 兵庫県立大環境人間学部教授 竹端寛氏は、以前は研究成果を上げることだけを考えていた生活だったが、長女が与えられ家事・育児も手伝う中で、「共に思いやること」の大切さに気付かされた。 「迷惑を掛け合う関係を増やしていくことが大事」「私は迷惑を掛けないから、あなたも迷惑を掛けないでね」という相互不可侵な関係ではなく、人の話に関心を持って欲しいと語っている。 (毎日新聞 2024/04/27 掲載) |
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