(公財)ホスピス財団 メールマガジン「ホスピス財団便り」 vol.6
 
 
新型コロナウィルスへの対応について
 
今月のコラム

志真 泰夫 氏
日本ホスピス緩和ケア協会
理事長
筑波メディカルセンター
代表理事
志真 泰夫
  自力の精神、利他の心 —ホスピス緩和ケアと仏教—
 近年、コロナ禍のもとで佐々木しずか閑先生(花園大学)のYoutubeなどでの講義を通して、釈迦の仏教を学び続けている。遅々とした歩みではあるが、ようやく仏教を通して「ホスピス緩和ケア」を考える入り口に立った、と思える。
 釈迦の仏教の真髄は「四法印」、すなわち「諸法無我」「諸行無常」「一切皆苦」「涅槃寂静」である。日本に暮らす私たちにとって、一度は耳にしたことのある仏教の言葉であろう。しかし、その持つ意味を理解している人は、そう多くはないかもしれない。かくいう私も佐々木先生の講義を繰り返し聴きながら、ノートを取り理解に努めている。
 特に「一切皆苦」とは、死に向かって生きる人生は苦しく、そこから誰も救ってはくれない、という、多くの人たちにとって受け入れがたいが確かな真理でもある。しかし、ホスピス緩和ケアに携わる私たちは日々の臨床の中でそれを見ている。そして、病老死の苦から私自身も逃れることはできない。また、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、人類全体に苦をもたらしたと言えるかもしれない。それに気づくと「苦とはなにか」を知りたいと思う。
 釈迦は遺言で「じすほっす自洲法州」、自らを島として、拠り所として生きよ、ブッダの教えを島として拠り所として生きよと教えた。自らを拠り所とする、それを私は「自力の精神」と名付けたい。「苦とは何か」を知り、体得し、それを滅するためには自らを拠り所として、釈迦の教えを導き手としてこれから老いてゆく日々を生きることなのだ、と思う。
 さて、私は2016年、65歳から四国で歩き遍路を始めた。遍路では様々な人々との出会いがあり、別れがある。印象的な出会いがあった。昼間からヘッドホンを付けて、音楽を聴きながら踊っている青年がいた。道に迷っていた私は、多分道を聞いても適当にあしらわれるだろうと思いながら、行き先を尋ねた。青年はたどたどしく答えながら一生懸命教えてくれた。そして、私は「ありがとう」と言って別れた。ふと振り返ると、青年は私の後ろ姿に手を合わせて祈っていた。胸を突かれる思いがした。四国のお接待、そして、利他の姿を見た思いがした。利他とは、ただ他者のことを思うのではなく、他者の立場に立ち、判断し行うことである。ホスピス緩和ケアに携わる私たちは日々の臨床で利他を求められる。それは尊いことではあるが、難しいことである。空海の言葉に「自利利他」、「自己を深めることと他者の救済は一つである」という教えがある。空海は、「利他」を思うあまり「自利」を見失ってはならないと伝えようとした。「自利」の土壌から真実の「利他」が始まる。私はそれを「利他の心」と呼びたいと思う。

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ホスピス財団主催・協賛の研修会、セミナー、出版等のご案内
第7回 日本Whole Person Care研究会 ~東洋的視点・西洋的視点~ が開催されます
 
 
第7回 日本Whole Person Care研究会のチラシ    多数のご参加をお待ちしています。

■日時:2023年 3 月 5 日(日)10:00~12:30
■場所:Web開催(ZOOMシステム)

大会長:松岡順治 (岡山大学病院 緩和支持科)
オンライン開催・参加費無料

■講演1『仏教の瞑想とマインドフルネス』
 蓑輪 顕量 先生 (東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻
         インド哲学仏教学講座)
■講演2『真のWounded Healerになるために』
 栗原 幸江 先生 (NPO法人 マギーズ東京 理事・心理療法士)

申し込みフォーム:https://forms.gle/CEuGeH9JWdtX22WT6
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第6回 Whole Person Care 研究会がオンラインで開催されました
 
 
第6回 Whole Person Care 研究会のチラシ   「医療における”癒し”とレジリエンス」をテーマにオンラインセミナーで開催されました。

■ 日 時:2022年11月19日(土)13:30~16:30
■ 場 所:Web開催(ZOOMシステム)

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第10回 WPC 読書会のご案内
 
 
『Whole Person Care教育編』の表紙   ■ 日 時:2023年5月12日(金) 19:00~20:30(オンライン)
■ 内 容:
『WPC教育編:第5章(レジリエンスの育成)・第6章(苦悩への応答)
教科書の上記の範囲の理解を中心に討議しますが、事前に読んでいなくても参加できます。また、傍聴のみでも構いません。

申し込みは方法は後日ホームページにて案内いたします。
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『Whole Person Care 教育編』が好評発売中です
 
 
『Whole Person Care教育編』の表紙    2016年度に出版した『新たな全人的ケア』(Whole Person Care日本語版)、および2020年度に出版した『Whole Person Care 実践編』(Whole Person Care: Transforming Healthcare 日本語版)に続き、その教育編として『Whole Person Care教育編』(MD-Aware 日本語版)が発売されました。

■ 訳 者:土屋静馬氏、三好智子氏
■ 監 訳:恒藤 暁氏 
■ 出版元:三輪書店
■ 発 売:ホスピス財団
■ 売 価:2000円(税別)


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情報コーナー
 
映画の紹介
 
映画『すべてうまくいきますように』の1シーン   「自分らしい死」をめぐる、父と娘の葛藤を描く話題作
私たちは、自由に安心して「生きる権利」をもっている。そんなの当たり前だよ、とだれもが言うだろう。ではあなたは、自由に安心して「死ぬ権利」はある、と考えるだろうか。

「安楽死」という深刻でセンシティブなテーマを描いたフランス・ベルギー映画『すべてうまくいきますように』が2月3日(金)に全国公開される。

https://maonline.jp/articles/movie201
https://eiga.com/movie/95185/theater/
 
 
映画『明日香に生きる』のポスター   【ホスピス財団後援の映画、「明日香に生きる」が封切りされました。】
2月24日橿原で封切り後、順次全国で公開予定です。
予告編、公開予定等の詳細は以下を参照ください。

https://www.inochi-hospice.com/asuka/
 
 
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介
 (記事のコピー等をご希望の方はホスピス財団事務局へご連絡ください。)
 
・増えるホスピス住宅
がんや難病で終末期を迎えた人の看取りに特化した「ホスピス住宅」と呼ばれる民間施設が増えている。制度的にはサービス付き高齢者住宅になるが、専門性のある看護師がおられ人工呼吸器や胃瘻、また緩和ケアなどに24時間対応できる。今後も需要が高まることを紹介した記事。
(毎日新聞 2023/01/05 掲載)

・消防団に入った理由(滝野隆治の掃苔記)
シニア生活文化研究所代表の小谷みどり氏が、地域活動の一環として地元に消防団に入られたいきさつが紹介されている。「居合わせた人に役割を振って、皆で人命救助はする。これが『共助』の基本なんですね」と語られている。
(毎日新聞 2023/01/22 掲載)

・シリーズ「死と生を見つめて」
新しく企画されたシリーズで、生と死にまつわる取り組みや研究、死生観などを扱う記事で今回は5回シリーズ。様々な現場で死と生に思いを巡らせている人を取材している。看護師で僧侶の玉置妙憂氏、緩和ケア医の山崎章郎氏など5名が、その専門領域での体験、実践を語られている。
(読売新聞 2023/02/07〜11 連載)

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