新型コロナウイルスに罹患された方々、またコロナ禍により生活面等で困難な中におられる方々へ、
心よりお見舞い申し上げます。 また感染症対策に尽力いただいている保健、医療従事者の方々へ心より感謝申し上げます。 ホスピス財団 理事長 柏木 哲夫
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今月のコラム |
ホスピス財団事務局長
大谷 正身
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小さくされた者
柳美里さんの小説「JR上野駅公園口」が、昨年11月全米図書賞という栄誉ある賞を受賞したことを知り、好奇心から手に取ってみた。1964年東京オリンピックの前年に出稼ぎ労働者として福島県相馬郡から上野に上京、高度成長ののち、最後は路上生活者になった男性が主人公である。柳美里さんが一貫して取り組んできたテーマ「居場所のない人に寄り添う物語」であるとのこと。 昨年、米国で翻訳出版された本書が、どのような理由で受賞したかは、私には定かではないが、黒人男性が警官による暴力で亡くなった事件、それに伴い「Black lives matter」が大きな抵抗運動となったこととは無縁ではないと思われる。また、この受賞と時を同じく国内においても、バス停のベンチで寝ていた路上生活者の女性が殴られ死亡したという痛ましい事件、さらには今回の東京オリンピックの影響で、上野公園の路上生活者が強制的に立ち退きさせられている事実や、コロナ禍で失業し、行き場を失なった多くの人々がおられる現実など、本書が31版を重ねる所以であることは想像に難くない。 読後、ふと新約聖書にあるイエスの語ったことば、“この小さい者たちの一人が滅びることは、天におられるあなたがたの父のみこころではありません”が心に浮かんだ。 ここでの小さい者とは、子どもだけを示すのではなく、虐げられたもの、社会的に排除されているものなど、弱者を指す言葉と考えていいと思う。この聖書箇所には、別訳もあり“この小さくされた者のひとりが滅びることは、・・以下略”・・・“と訳されている。*¹ さらにイエスは、“あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい”とも語っておられる。ここに言われる隣人とは誰かということになるが、イエスは具体的な例を「よきサマリヤ人」のたとえ話 *² で示されている。ここで分かるように、小さくされた者が、すなわち隣人であると理解できる。 著者の柳美里さんとっての隣人とは、「居場所のない人」、イエスの言う“小さい者(別訳;小さくされた者)であり、この路上生活者である主人公へ愛のまなざしが注がれ、その視座でこの小説が書かれたものであると思わされた。それ故に、本書が私自身を含め、多くの人に共感を与えたと思うのである。 翻ってホスピス・緩和ケアに係る者にとっての“小さくされた者”“隣人”、それは言うまでもなく、余命の限られた患者の皆様と、そのご家族であり、日々、これらの小さくされた人々に寄り添い、ホスピスケアに尽力されている医療従事者の皆様に、改めて敬意を表するとともに、ホスピス財団も、その一翼を担いつつ、進みたく願うものである。
*1;本田哲郎個人訳
*2;ルカの福音書10章25節~37節 |
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・私の道 娘が開いた ・・末期がんで尊厳療法 末期がんで神戸アドベンチスト病院ホスピスに入院中である、元養護学校長であった白石充夫さん(70)が、自分の人生を振り返り「ディグニティ・セラピー」に取り組んでいる姿を取材した記事。 白石さんの次女、季世子さんは重い脳障害があり、彼女と歩む人生から養護教育に取り組む人生を 歩まれたとのこと。 (毎日新聞 2021/07/16 夕刊掲載) |
・父のみとりから見えた死 ・・・「メメント・モリ」身近に 経済学者の宇沢弘文氏の長女、占部まり医師は、自宅で父を看取ったことがきっかけで、日本メメント・モリ協会を設立し、どのように死を迎えるかを考えている医師である。占部さんのこれまでの歩みと、死生観を、ジャーナリストの池上 彰さんがインタビューした記事。 (毎日新聞 2021/07/18 掲載) |
・つながりの中で生きる ・・・・滝野隆浩の掃苔機記(2回連続) 小説「臨床の砦」の作者で、医師である夏川草介氏を取材した記事。新型コロナウイルス感染症に立ち向かう姿が描かれているが、夏川医師は患者とのつながりを大切にし、「つながりのある人の人生は明るく見えます」と語っておられる。 (毎日新聞 2021/07/11、18 掲載) |
・患者のきょう 笑顔に ・・・・問い続ける 生と死 元俳優の高部知子さんは、重い心臓病をもって生まれた娘の体験を機に、患者や家族に心のケアを目指して精神保健福祉士と心理士の2つの国家資格を取り、京都で仏教医学を用いたケアを実践していることを取材した記事。 (毎日新聞 2021/07/11 掲載) |
・乳がん 語らいの湯 ・・・「乙女温泉」全国へひろがる 乳がん手術で乳房のなくなった女性でも気軽に銭湯へ行けるように、尼崎の「蓬莱湯」が協力して2020年10月から始まり安心して交流がなされ、それを機に全国に「乙女温泉」として拡がっていることを紹介した記事。 (毎日新聞 2021/07/07 掲載) |
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