新型コロナウイルスに罹患された方々、またコロナ禍により生活面等で困難な中におられる方々へ、
心よりお見舞い申し上げます。 また感染症対策に尽力いただいている保健、医療従事者の方々へ心より感謝申し上げます。 ホスピス財団 理事長 柏木 哲夫
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今月のコラム |
ヴォーリス記念病院
緩和医療 細井 順
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コロナ禍にフランクルのことば
新型コロナ感染拡大による医療崩壊が叫ばれる中、がん患者さんにも影響が出ている。がんの診断や治療の遅れ、そしてホスピス・緩和ケアにも、これまでとは違った状況が生まれた。 「ホスピス・緩和ケアの原点は、その人がその人らしい生を全うすることを援助する働き」と柏木哲夫先生は著わしている(『定本ホスピス・緩和ケア』より)。つまり、患者さんをひとりの人間として大切に関わることである。患者さんと家族、また病棟スタッフが立場を越えて、人間としての弱さや限界を共にしながら歩むことと筆者は理解している。歩みの中から生まれる「いのち」が遺る人たちの生きていく力になっている。 コロナ禍では、感染予防の観点から外部との接触を避けるようになり、ホスピス病棟は閉鎖的になってしまった。面会が制限され、患者さん・家族にとっては、互いに支え合うという大きな拠り所が奪われてしまった。病棟スタッフ目線では、家族へのケアが疎かになった。 看取りが近づいた時には制限を緩和しているが、「最期のことば」を交わすこともできず、患者さん、家族、病棟スタッフにも心残り、やりきれなさを覚えながらのお別れになってしまう。 暗然とした日々の中、フランクルの言葉を思い出す。フランクルは、第二次世界大戦中、ナチスドイツによるアウシュビッツ強制収容所での大量虐殺(総数600万人といわれる)を奇跡的に生き延びて、戦後を生きる人類に希望と勇気を与えた精神医学者である。 「収容所という、考え得る限りの最も悲惨な外的状態、また自らを形成するための何の活動もできず、ただできることと言えばこの上ないその苦悩に耐えることだけであるような状態——このような状態においても人間は愛する眼差しの中に、彼が自分の中にもっている愛する人間の精神的な像を想像して、自らを充たすことができるのである。」(フランクル著『夜と霧』、霜山徳爾訳) 明日が見出せない極限状況であっても、心の中に愛する人を想像するだけで自分をとりもどせるというのである。 コロナ禍は戦後最大の脅威かもしれない。患者さん、家族、病棟スタッフ、誰にとっても「その人らしい生を全うすること」は今まで以上に難しくなった。苛立つことが多いが、フランクルは、「人生から何をまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである」(同著)と迫ってくる。 フランクルの境地には到底達することはできないが、行き詰まった感のある日々の中で、ケアのあり方、自分の生き方をもう一度見直してみたい。 |
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新年度になり、調査・研究助成の公募、ホスピス財団ニュース40号、ホスピス緩和ケア白書2021、2021年度の事業計画書を掲載いたしましたので、ご覧ください。 日本ホスピス財団ホームページ→ https://www.hospat.org/ |
第3回 日本 Whole Person Care 研究会が開催されました | |||||
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日本 Whole Person Care 研究会 第2回オンライン読書会が開催されます | |
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『 Whole Person Care 実践編 』 ー医療 AI 時代に心を調え、心を開き、心を込めるー が好評発売中です | |||||
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J-HOPE4が発行されました | |||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』好評発売中 |
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・スペイン 安楽死合法化 欧州で、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグに次いで4番目になる安楽死合法化がスペインで決定された。 また、安楽死ではないが、本人の意志により延命措置の停止を認めるフランスやイタリヤなどの国もあり、消極的安楽死などと呼ばれている。一方で、医療従事者からは、スペインは緩和治療が遅れているので、その代わりに安楽死が認めれたとの批判のある。 (毎日新聞 2021/04/10 掲載) |
・がんと生きる フォトブックに がんになっても、1枚の写真が自分を変えることが出来るという発想で、自身もがん経験者である広告代理店勤務の方が、がんサーバイバーの写真集を出版された。撮影した人は227名、職業も多種多様、しかし共通しているのは満面の笑み、また、これを機に新しく患者会も出来たことを紹介した記事。 (毎日新聞 2021/03/18 掲載) |
・人生会議について 命の危険が迫った状態になると、約70%の人が医療やケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりできなくなると言われている。人生の最終段階(終末期医療)を事前に家族とよく話し合うという「人生会議」の大切さを提言した医師のコラム。 (毎日新聞 2021/03/09 掲載) |
・映画「痛くない死に方」・・・自分らしい最期とは 尼崎市の医師、長尾和宏氏の著書を原作にした映画が公開された。コロナ禍で死を自分ごととして考える人が増えた今こそ見て欲しい作品と、監督の高橋伴明氏が語っている。 (読売新聞 2021/03/05 夕刊掲載) |
・詠んで生きる・がん ・・・医療ルネサンス 言葉の表現とともに、がんに向き合う人々の姿を紹介した5回シリーズ。 詩、俳句、短歌を詠むことで、がんであっても前向きに生きている4人を紹介した記事。 乳癌の手術された歌人の梶原彩子さんの一句 「出し抜けに告知は終わりわたくしは患者という名の永遠になる」 (読売新聞 2021/03/01〜05 連載) |
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