(公財)ホスピス財団 メールマガジン「今月のお便り」 vol.73
 
 新型コロナウイルスに罹患された方々、またコロナ禍により生活面等で困難な中におられる方々へ、 心よりお見舞い申し上げます。
 また感染症対策に尽力いただいている保健、医療従事者の方々へ心より感謝申し上げます。
ホスピス財団 理事長 柏木 哲夫
 
新型コロナウィルスへの対応について
 
今月のコラム

森田 達也氏
聖隷三方原病院 副院長
緩和支持治療科
森田 達也
  緩和ケア国際研究の足掛かりになったホスピス財団の研究支援:10年の歩み

 浜松市にあります聖隷三方原病院緩和治療科の森田と申します。最初に、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団をサポートしてくださいますみなさまへ感謝申し上げます。このたび、財団より支援をうけた緩和ケア国際研究を紹介させていただきます。
 ことのはじまりは2010年8月に岐阜で開催されたAsia Pacific Hospice Palliative Care Networkで「何かアジア中心にホスピス・緩和ケアに関する研究をしよう」という声が自然発生的にあがったことでした。恒藤先生の呼びかけでひとが集まり、各国にどんな緩和ケアリソースがあるかの調査を2011-12年の財団の資金援助で行えました(*1)。参加した国は、日本、韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インド、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドと12国にわたりました。とはいえ、ちょっとお互いのことをまだよく知らないメンバーで、まだまだ仲良くなる前に終わってしまったという感じもありました。
 いきなりアジア太平洋は無理がある・・との反省に立ち、2012年から日本・台湾でまずお互いに行き来しながら関係を作っていこうというプロジェクトに着手しました。2012-14年の財団の支援を受けた研究では、当初日本・台湾、その後韓国を迎え、東アジア3国で終末期ケアの文化的な違いを医師を対象に調査しました(*2,*3)。この研究そのものはこじんまりとしたものでしたが、Cheng SY(国立台湾大学)とSuh SY(Lisa, Dongguk大学)という気さくで自由を愛する、やる気に満ちたプロフェッショナルと知り合いになったことは振り返るととても大きなできごとでした。
 やりとりをくりかえすうちに顔の見える関係に徐々になり、日本では森雅紀が帰国したこともあり、Cheng SY、Suh SY、森雅紀を核とした米国留学経験のあるEnglish nativeのメンバーで集まることができるようになりました。2015-18年の財団助成をうけた研究では、日本・台湾・韓国での患者さんを対象とした大規模コホート研究につながりました(*4)。のべ37施設(!)から2638名(!!)が登録され、20以上におよぶ課題を明らかにしています4。プロジェクト名はEast Asian collaborative cross-cultural Study to Elucidate the Dying process (EASED)といい、「気楽に楽しくやろう」を前面にだして、月に1~2回のミーティングも和気あいあいとした女子会のような様相を呈しています(学会の時は飲み会)。
 2019年からはアジア地域でのアドバンスケアプランニングの定義を行う共同研究を同じメンバーで行い、インドネシア、香港、シンガポールが加わっています。研究を通して、各国の若手医師どうしでコミュニケーションをとるようにもなっており、将来が楽しみです。
 協力や協働は突然できるものではなく、日々の積み重ね、しかも偶然がもたらしてくれるひととの出会いによるものでもあると思います。当初あまり有益そうにはみえなかったかもしれない数年間の財団の支援が、結果的には大きな実を結びつつあります。財団のみなさま、あわせて、つねに国際研究の経緯をおもてなしを通して気にかけてくれた恒藤先生にかさねて感謝申し上げます。

*1 Yamaguchi T, Kuriya M, Morita T, Agar M, Choi YS, Goh C, Lingegowda KB, Lim R, Liu RK, MacLeod R, Ocampo R, Cheng SY, Phungrassami T, Nguyen YP, Tsuneto S. BMJ Support Palliat Care. 2017;7(1):23-31.

*2 Morita T, Oyama Y, Cheng SY, Suh SY, Koh SJ, Kim HS, Chiu TY, Hwang SJ, Shirado A, Tsuneto S. J Pain Symptom Manage. 2015;50(2):190-9.

*3 Cheng SY, Suh SY, Morita T, Oyama Y, Chiu TY, Koh SJ, Kim HS, Hwang SJ, Yoshie T, Tsuneto S. Medicine (Baltimore). 2015;94(39):e1573.

*4 Shin J, Kim SH, Suh SY, Cheng SY, Chen PJ, Yamaguchi T, Morita T, Tsuneto S, Mori M; EASED investigators. Support Care Cancer. 2020.
     
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ホスピス財団主催・協賛の研修会、セミナーのご案内
第3回 日本 Whole Person Care 研究会が開催されます
 
 
第3回 日本 Whole Person Care 研究会のラベル    第3回日本 Whole Person Care 研究会が
令和3年3月13日(土)午後(13:30~17:00)に開催されます。
皆様のご参加をお待ちいたします。
 
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オンライン読書会の開催のお知らせ
 
 
 日本 Whole Person Care 研究会は、Whole Person Care についての理解を深めるために定期的(3か月に1回程度)に読書会を開催いたします。

■日時:2月12日(金)19:00〜20:30
■課題図書:
 「Whole Person Care 実践編ー医療AI時代に心を調え, 心を開き, 心を込める」1~3章

事前に該当箇所を読んでご参加ください 

■参加希望者は下記フォームよりお申し込みください
 お申し込みフォーム:https://forms.gle/hJNgYyh5a7bYPaUm6
(当日のZoom URL:はお申し込みフォーム送信後に、送付されます。)

是非、周りの方もお誘いください。初心者歓迎、転送歓迎いたします。
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第2回 日本 Whole Person Care 研究会が開催されました
 
 
日本 Whole Person Care 研究会のラベル    第2回日本 Whole Person Care 研究会が11月28日に開催されました。
当日の講演内容(音声と資料)は 日本Whole Person Care研究会のホームページで公開されています。
 
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お知らせのコーナー
ホスピス財団ニュース39号が発行されました
 
 
ホスピス財団ニュース39号の表紙    ホスピス財団20周年を記念して、これまでの歩みを写真で辿りました。
 
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『 Whole Person Care 実践編 』 ー医療 AI 時代に心を調え、心を開き、心を込めるーが発刊されました
 
 
『 Whole Person Care 実践編 』の表紙    本書は Whole Person Careに関するホスピス財団発行が発行する2冊目として、既刊『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』に続いて、6月より三輪書店より全国で発売されています。
医療に携わる方々を始め、医学生、看護学生の皆様、ホスピス緩和ケアに関心のある方々、 是非ご一読ください。

 
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J-HOPE4が発行されました
 
 
J-HOPE 4 の表紙    世界的に質の高い研究として国際的にも評価されている調査・研究が、この度 J-HOPE 4 としてまとめられました。
 今回は付帯研究が50題と充実していますので、是非ご覧ください。
ホームページでも公開しておりますが、ご希望の方には 1000 円で頒布いたします。(ホスピス財団賛助会員には無料で送付しております)

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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』
 
新たな全人的ケアの表紙  
 「Whole Person Care:A New Paradigm for 21Century」(Springer 社 2011年)の日本語訳として『新たな全人的ケア:医療と教育のパラダイムシフト』を青海社より全国で発売中です。
 Whole Person Care とはカナダ、マギル大学医学部で開発された、新しいケアの概念であり、従来の考え方を根本的に変えるアプローチです。
 是非、ご一読ください。
 
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情報コーナー
情報コーナー
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介
 
・がんの妻が託したレシピ
がんで妻を亡くしたフリーライターの藤井満さんが、「闘病ではなく生活を記して」と願った妻の 思いを受けて、妻に教わった料理を中心に介護から看取りまでの日々を綴った本が出版されたことを 紹介した記事。
生きる意欲を失いかけたこともあったが、教えられた150の料理に支えられていると語っている。
(毎日新聞 2021/01/26 掲載)

・がん教育の講師を患者自らが育成
「がん教育」は新しい学習指導要領で、2021年から中学校で実施される予定であるが、人材不足が 心配されている。そういう中、がん患者や家族、遺族の協力で、がん教育を充実させる努力がなされていることを紹介した記事。
(毎日新聞 2021/01/07 夕刊掲載)

・コロナ禍で、がん検診の受診者が減ることが心配
日本では、毎年100万人以上が新たにがんと診断されている。しかし昨年来、コロナの影響でがん検診者が減っている。がんは1cmになるのに10年~20年かかるが、1cmのがんは1~2年で2cmになる。早期発見のためにも、がん検診を受けるべきだと警鐘する記事。
(毎日新聞 2021/01/04 掲載)

・シリーズ医療ルネサンス 特集「伝える/伝わる」4回シリーズ
ALS発患者が自らが講演を行いALS患者に希望を与える活動をしている記事。
親のがんをどう子供に伝えるのがよいかをとりあげた記事。
難病の子ども達に遊ぶ楽しさを教えたいと日本財団が、年数回「お遊び会」を開催したり難病のこども用のおもちゃセットを配布していることを紹介した記事。
コロナ禍で緩和ケア病棟でも面会が出来ないため、オンライン面会が活用されていることを紹介した記事。
(読売新聞 2021/01/04〜08 連載)

 
 
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■このメールマガジンは、ホスピス財団の賛助会員をはじめ、ホスピス・緩和ケア医療従事者の皆様にお送りしております。また、お知り合いの方々にも転送していただけると幸いです
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