今月のコラム |
一般社団法人
シニア生活文化研究所 所長 ホスピス財団事業委員 小谷 みどり |
冒頭から宣伝で申し訳ありませんが、昨年、新潮社から『没イチ』を出版しました。私の夫は8年前、寝ている間に心臓が停止し、亡くなりました。あまりにも予期せぬ突然のことだったこともあり、周りの人たちは腫れ物に触るように接する様子が、私には大きな負担でした。 よかれと思って私に忠告してくださった方の「夫が亡くなったばかりだから、楽しそうにしない方がいい」という言葉に傷ついたこともあります。「既婚、未婚、離死別」のいずれかに〇をつけるアンケート調査をみて、離婚と死別を一緒に括る選択肢に気分を害したこともあります。夫と死別する前はこんなことに思いは至りませんでした。 死別者の置かれた状況は年々変化しています。1990年には、65歳以上の女性では死別者は56.6%と過半数を占めていたのに、2015年には死別者が38.7%、夫がいる女性は51.4%となっています。75歳以上では女性の57.6%が死別者ですので、この25年間で夫と死別する年齢がざっと10歳は上昇している計算です。 また多くの男性は、妻より先に死ぬと思い込んでいますが、自身が長生きすれば妻に先立たれる可能性が高くなります。老後は妻だけが頼りという男性に、想定外のことが起きるのですから、大変です。子どもがいても老後は夫婦二人が当たり前という時代において、配偶者と死別することはひとり暮らしの開始を意味します。しかも高齢になって新しい環境に順応するのはとても大変です。ホスピス財団の2年前の調査では、50代以下の既婚者は、男女ともに「相手より先に死にたい」と回答しています。これからは、亡くなることよりも、自分が残されることの方が大きなリスクとして捉えられる時代なのです。 そんなことから、配偶者と死別した後、残された配偶者はどう生きるかという問題に着目しようと思い、冒頭の著書をまとめました。 4年前には、私が講師をしている立教セカンドステージ大学の学生たちと没イチ会を結成し、配偶者を亡くした人同士が気軽に情報交換できる場を作りました。死別の悲しみに焦点をあてるのではなく、「亡くなった配偶者の分も2倍人生を楽しむ人の会」というテーマを掲げ、死別の悲しみを乗り越え、その後の人生をどう生きるかという問題を考えようという試みです。 妻と死別した男性だけのファッションショーも開催しました。妻と死別し、ひきこもる傾向になる高齢男性が少なくないことから、ちょっと服装を変えるだけで気分が変わり、外出しようと思う人が増えればいいなという思いで企画しました。元ミスユニバースからウォーキングのレッスンを受け、妻との思い出の曲でランウェイに登場するという演出も、妻の分も生きるという会の趣旨にぴったりでした。 結婚すれば、離婚しない限り、先立つか、没イチになるか、どちらかしかありません。夫婦でみれば、死別率は100%です。自分がどう死を迎えるかという視点も大事ですが、残された配偶者がどう生きていくのかという問題にもこれからも注目していきたいと思います。 没イチ会 ファッションショー |
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ホスピス・緩和ケア市民フォーラム in 京都 | |||||
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WholePersonCare ワークショップ2020 | |||||||
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第2回 日本グリーフ&ビリーブメント学術大会 | ||||||
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ホスピス財団ニュース37号が刊行されました | ||||||
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「ホスピス緩和ケア白書2019」好評発売中 | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
映画「いのちがいちばん輝く日」が新たにDVDとして販売されました | |||||
ホスピス財団が後援している映画がDVDとして発売されました。 このDVDには、特別対談として柏木哲夫氏と細井 順氏の対談が収録されています。 |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・死ぬのが怖い人に読んでほしい大特集 週刊現代が、死との向き合い方に関して様々な角度から調査、取材した特集記事 後半にホスピス財団 柏木理事長のコメントも掲載されています。 (週刊現代 11月23日・30日 合併号) |
・TSURUMIこどもホスピスの自立が厳しい 小児がんや、難病の子どもを支援している大阪市のTSURUMIこどもホスピスが、大手企業の支援が終わったことにより運営が厳しくなっていることを紹介した記事。 (毎日新聞 2019/11/15 夕刊掲載) |
・「自宅で最期を」かなえる 延命治療を望まず、自宅で最期を迎えた方の紹介と、そのために必要な事前の意思決定などをレポートした記事。 (毎日新聞 2019/11/10 掲載) |
・「レジリエンス外来」で、立ち直る力を がん患者の心のケアを、対話を重ねて立ち直る力を与えるために、国立がん研究センター中央病院で開設されている「レジリエンス外来」取材した記事。 (読売新聞 2019/10/09 夕刊掲載) |
・シリーズ 意思決定 ・・高齢者の「選択」 6回連続 がんに罹ったとき、積極的に治療を行うか、治療はしないかという難しい問題を抱え、その選択に悩みながらも決断した人々の体験を紹介した記事。1回目、2回目で紹介されている、清水博雅さん(93歳)は、今も現役で幼稚園園長とお寺の住職を兼務されています。波乱万丈の人生の中で、その都度決断された経緯が紹介されています。 (読売新聞 2019/10/02〜9 連載) |
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