今月のコラム |
ホスピス財団理事
大阪大学大学院人間科学研究科 臨床死生学・老年行動学研究分野 教授 佐藤 眞一 |
死を考える授業について 先日、山口県岩国市の小学校5,6年の児童と中学校2,3年の生徒に、スクールカウンセラーが「トロッコ問題」を題材とする授業を行ったことについて、賛否の声の上がったことが報じられた。 「トロッコ問題」とは、暴走するトロッコがこちらに向かって走ってくるが、このまま自分の前を通り過ぎると、その先にいる5人の作業員が轢かれてしまう。しかし、目の前にあるレバーを操作すると、トロッコは別の線路の方に分岐し、その先にいる1人の作業員が轢かれる。絵に描かれたこの状況を見ながら、自分だったら目の前にあるレバーを操作するかどうかを考える、というものである。 報道では、市井の人々に「トロッコ問題」の授業が児童、生徒に行われたことをどう思うかを尋ねていた。賛否は別れ、「中学生はともかく、小学生に死をテーマにする授業を行うことは年齢的に早すぎる」という否定の意見と、「子どもであっても、こうした心揺さぶられる問題について考えさせることは有意義だ」という賛成の意見に大別できた。 私が気になったのは、否定の方の意見である。小学生に死をテーマに授業をすることは早すぎるのだろうか? かつて「幼稚園児の死の理解」をテーマにした博士論文を指導したことがある。死の理解の基準として、機能停止(生命機能が停止すること)、不可逆性(再び生き返らないこと)、普遍性(生物は必ず死ぬこと)の3つを定めて実験によって調べたところ、機能停止と不可逆性は3歳の年少児でも理解していることが明らかとなったが、普遍性については5歳の年長児でも理解している児は約半数にとどまっていた。しかし、諸研究を総括すると、普遍性を含む3つの死の概念は、小学校低学年ではほぼ理解されているようであった。 私は、小学2年生の時に体験した5歳の従弟の死とその葬儀に強い衝撃を受けたことを覚えている。小児がんで亡くなった従弟の葬儀の場で、その家族や親族の大人たちが悲嘆する姿を目の当たりにして、生と死を分かつことの異様さを体験した。一方で、年老いた祖母が死を恐れずに目の前で笑っている姿を見て「何故、お婆ちゃんはもうすぐ死ぬのに、死が怖くないのだろう」との疑問を抱くようになっていた。その祖母が、まもなくアルツハイマー病に侵され、介護に明け暮れる母を見て、生と死の不条理さにも気づいた。いずれも私は小学生であった。 自分の体験を一般化してはいけないのかもしれないが、小学生が死について考えることは決して早すぎることではない。民俗学では「ケガレ」といわれ、一般心理からいえば遠ざけておきたい「死」ではあるが、自殺する小学生もいるのであるから、むしろ死を考える授業は必要なのではないだろうか。そして、そのことを保護者も一緒に考えることが大事なのではないだろうか。「トロッコ問題」の報道に接して、改めてこのようなことを考えた。 |
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WholePersonCare ワークショップ2020 | |||||||
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ホスピス財団 第3回 国際セミナー“マインドフルネスに基づく医療の実践”が開催されました | |||||
第3回国際セミナーが9月7日、8日、東京と大阪において、カナダMcGill大学よりDobkin先生をお招きして開催されました。マインドフルネスな医療者を目指して、瞑想の演習を交えての講義、そしてマインドフルネスな医療によるエビデンスも紹介され、マインドフルネスを深く学ぶ、有意義な機会となりました。 参加者:東京会場61名 大阪会場49名 参加感想文はホスピス財団ニュース37号に掲載されています。 |
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意思決定支援セミナーが開催されました | ||||||
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ホスピス財団ニュース37号が刊行されました | ||||||
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ホスピス緩和ケアフォーラム2020協力医療機関の募集 応募締め切りは11月29日(金)です。 | ||||||
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2020年度 調査・研究助成募集のご案内 応募締め切りは11月29日(金)です。 | ||||||
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「ホスピス緩和ケア白書2019」好評発売中 | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
“ホスピスシンポジウム 奈良県のがん医療を考える” が11月24日(日)に開催されます | |||||
日 時:11月24日(日) 13:30〜(13:00 開場) 場 所:奈良県文化会館 小ホール(定員 300名) テーマ:「在宅、在宅って言うけど、ほんまにできるの?」 |
映画「いのちがいちばん輝く日」が新たにDVDとして販売されました | |||||
ホスピス財団が後援している映画がDVDとして発売されました。 このDVDには、特別対談として柏木哲夫氏と細井 順氏の対談が収録されています。 |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・人生を自分らしく全うする 乳がんの発症を機に、肺転移、肝臓転移、さらに骨転移と苦しい闘病生活の中でも、仕事復帰へ の希望を捨てずに闘っている一人の女性をレポートしつつ、そのための社会の体制・環境作りも 必要であることを提言した記事。 (毎日新聞 2019/10/09 掲載) |
・耳の澄まし人を思う 不安やうつに苦しんでいるがん患者へ「こころの症状」の緩和を行っている埼玉医科大の大西秀樹教授の新著を読んだ感想を記した記事。 (毎日新聞 2019/10/04 掲載) |
・いっぱい泣いて自分に優しく・・・シリーズ シングルスタイル 彼氏が急逝し、つらい時期にある女性に、多くの人から共感や、アドバイスの便りが来たこと、またその内容を披露した記事。さらにグリーフケアの専門家である坂口幸弘氏(関西学院教授) さらに、小谷みどり氏(シニア生活文化研究所)のコメントも記されている。 (読売新聞 2019/09/22 掲載) |
・がん患者の就労支援 がんに罹っても働ける社会をつくることが課題となっているが、その現状をレポートし、 様々な取り組みが行われている事例や、困難な課題などを紹介した記事。 (読売新聞 2019/09/04 掲載、毎日新聞 2019/09/12 夕刊 掲載) |
・がん患者を支える・・・5回シリーズ がん患者を励まし、また必要な情報を伝えるという活動が、小さいながらも各地で実施されてい ることを紹介し、がん患者を支えるという尊い働きに感謝の気持ちが湧いてくる元気づけられる 記事。 (読売新聞 2019/08/27 〜 09/02 連載) |
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