今月のコラム |
神戸アドベンチスト病院
名誉院長 ホスピス財団理事 山形 謙二 |
「態度価値」実現への試み 人間の力ではどうしようもない悲劇的な現実の中で、人間の価値を決めるのは何なのか。あのアウシュビッツの地獄を生き抜いたビクトール・フランクルは、それを「態度価値」と言っている。 「人は、強制収容所の人間から一切をとり得るかもしれないがしかし、たった一つのもの、すなわち『与えられた事態にある態度をとる人間の最後の自由』をとることはできない。」(フランクル『夜と霧』) 態度価値とは、自分で変えることができない状況に対して、その人がどのような態度をとるかによって実現される価値である。ホスピスの課題の一つは、死を前にして「態度価値」実現を援助することであるとも言えるであろう。 私たちのホスピスでは、「態度価値」実現の一環として、「愛する者への手紙」を書くことに取り組んでいる。患者さん達に、自分の人生を振り返ってみて、自分が一番大事にしてきたこと、みんなに覚えておいて欲しいこと、みんなに遺しておきたいことなどを書き遺して頂くのである。 この手紙作成は、患者さんとチャプレン(病院付き牧師)との共同作業である。チャプレンのインタビューに患者さんが答える形で進められる。チャプレンがそれを文章化し、その文章を患者さんに見て頂いてまた書き直すという作業を繰り返すことにより、徐々に文章が練られ出来上がっていく。そこには、過去の感動的体験、愛する者との出会い体験、愛する者への感謝と別れの言葉などが綴られる。 不思議なことに、手紙を作成する過程で、殆どの人が「自分の人生は良い人生だった。これ以外の人生は無かった。ありがとう、さようなら」との思いを表現するのである。 ある女性はこのような手紙を遺された。「私は主人が大好きです。主人の所に嫁いでから今日まで、苦楽を共にできて本当に幸せでした。・・・アドベンチスト病院に入院する前日は二人で泣き明かしました。・・・夫婦は運命共同体。この人と人生を共に過ごせて本当に良かった。偽りのない私の気持ちです」(一部省略)。 長女様によると、お葬式でこの手紙が読み上げられ、参列者たちは「こんなお葬式は初めてだ」と感動していたという。「私たちにとっても母からの貴重なプレゼントでした」と長女様はしみじみと言われた。 「愛する者への手紙」は、患者さん本人の「態度価値」実現の援助になると同時に、残される家族とって非常に貴重なプレゼントとなっている。 |
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2020年度 調査・研究助成募集のご案内 | ||||||
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「ホスピス緩和ケア白書2019」が完成しました | ||||||
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ホスピス財団ニュース36号が刊行されました | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
映画「いのちがいちばん輝く日」が新たにDVDとして販売されます | |||||
ホスピス財団が後援している映画がDVDとして発売されます。 このDVDには、特別対談として柏木哲夫氏と細井 順氏の対談が収録されています。 |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・患者の痛み思いやる医師 ・・・医師・患者関係学講座開設 奈良県立医大が、医学と心理学の専門家が協力して新しい講座を開設した。患者が自分の病気を引き受ける気持ちになることが大切であり、そのために患者とどう付き合うかなど、その実際の講義を取材した記事。 (毎日新聞 2019/08/01 夕刊掲載) |
・自宅で親を看取ったら・・ 作家の山口恵以子氏が、91の母を自宅で看取った経験を紹介、在宅介護の難しさを感じつつも訪問診療の助けなどで支えられたことを話しされている。 (毎日新聞 2019/07/18 掲載) |
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