今月のコラム |
アジアACPデルファイ研究会議後(前列中央男性が筆者)
聖霊三方原病院
森 雅紀 |
“Everyone has a story to tell.” このたびTaiwan Medical Associationのご懇意で4月下旬に台北を訪問し、複数の国際会議に参加いたしました。 一つ目は、ホスピス財団より助成いただいた第2期日本・韓国・台湾共同事業(2016-8年度)の研究会議です。第1期で培われたネットワークをもとに、3国計39施設の緩和ケア病棟で終末期ケアの実態を明らかにする多施設前向き観察研究(”EASED”)が行われました。国内外の多くの先生方にご協力いただき、2600名以上の登録が無事完遂しました。会議ではデータの最終確認を行いました。互いの国を訪問し、国境を越えて多様な課題を解決していく過程で、強い信頼感が生まれました。「信頼があればどんなことも乗り越えられる気がするわ」という韓国の先生の言葉が印象的でした。 二つ目は、第3期国際共同事業の初回会議です。上記3国に香港・シンガポールを加えた5か国で、アジア文化に適したアドバンス・ケア・プラニング(ACP)の在り方を検討しようという試みで、私も参加させていただきました。やはり直接お会いすると、検討内容にもぐっと深みが生まれます。テレビ会議では出なかった機微が共有されたり、活発な意見交換を通して相互理解が深まったり。相違点が尊重される雰囲気が生まれ、よい船出になりました。 三つ目はTaiwan Medical Association主催のACPに関する「台北宣言」、今回のメインイベントです。まず上記5か国とインドネシアにおけるACPの現状について各国から発表がありました。特に台湾やシンガポールでは医療と国との緊密な連携に立ったシステムが構築されつつあり、勢いを感じました。次に、どのようにACPを推進すればアジアの患者さん・ご家族のQOL向上につながるかという視点から、患者本人・家族・医療者等に求められる役割について議論が行われ、「台北宣言」としてまとめられました。その内容は現在国際誌に投稿中です。これらの会議を通じ、先達が構築されてきた国際共同研究のプラットフォームをより発展させ、次世代に繋いで行こうという思いを共有しました。 また、アジアの仲間と昼夜を共に過ごす中で、忘れえぬ話がいくつもありました。欧州留学も終盤を迎え次のステップを模索する若手看護師、子育て真っ只中で搾乳しながら会議に出席する医師、大病を経てより輝きを増す仲間、念願の緩和ケア病棟開設に漕ぎつけアート療法の導入を試みる医師・・・。何度も温かな笑いが起こり、おのずと涙があふれる語らいを重ねる中で、一人が言いました。 ―”Everyone has a story to tell”(「一人一人に物語がある」)― この世に生を受けたものそれぞれにある、大切な物語。とりわけホスピス・緩和ケアの受け手・担い手には、物語が凝縮されているように感じます。国際共同研究もまた、国を越え様々な物語を紡ぎながら、現在の、そして未来の臨床に繋げる営みに他なりません。財団からの多大なご支援に心から感謝申し上げながら、ホスピス・緩和ケアにかける夢を、これからも共に紡いで行ければ幸いです。 |
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ホスピス・緩和ケアボランティア研修会のご案内 |
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「ホスピス緩和ケア白書2019」が完成しました | ||||||
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ホスピス財団ニュース36号が刊行されました | ||||||
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ホスピス緩和ケアフォーラム2020協力医療機関の募集 | ||||||
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2020年度 調査・研究助成募集のご案内 | ||||||
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Whole Person Care ワークショップのご案内 | |||||
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“Palliative Care Research”誌に論文として掲載されました | |||||
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ホスピス財団 第3回 国際セミナーのご案内 “マインドフルネスに基づく医療の実践” (逐次通訳付) | |||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 | ||||||
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・「がん哲学外来」が映画化されます 順天堂大の樋野興夫教授がはじめられた「がん哲学外来」が映画化され5月から上映されます。 監督の野沢和之氏自身もがんを患らったことで、撮影中にがん患者と共感できたと語っている。 映画タイトル「がんと生きる 言葉の処方箋」 (毎日新聞 2019/04/20 夕刊掲載) |
・がんと闘うAYA世代・・・ 「AYA世代」独りじゃないよ AYA世代(思春期・若年成人)のがん患者専用の病棟を取材。 全国で2番目になる大阪市立総合医療センター15階の27床には、同じ悩みを抱えたAYA世代の患者が共に励まし合いがん治療を行っている姿を紹介した記事。 (読売新聞 2019/03/28 夕刊掲載) |
・平成時代 人生の最終章 (特集 5回シリーズ記事) 急激な高齢化の波にさらされた平成時代。自分らしい最期をどう迎えるかを問いかける特集記事。胃ろうの是非、必ずしも否定できない実例、在宅での緩和ケア、看取りの現状、法律改正による介護職員によるたん吸引の容認、安楽死を求めるのかなど、これからの終末期医療を考えるための示唆に富んだ記事である。 (読売新聞 2019/03/25〜29 連載) |
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