今月のコラム |
GRACEメンバーとともに (右端が村川先生)
関西大学人間健康学部
村川 治彦 |
高齢化社会における新たな「死にゆく過程」のケアを求めて 世界に類例を見ないペースで高齢化の道をたどる日本は、戦後の第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、かつてない超高齢社会に突入します。一方戦後70年間、自宅ではなく病院で死を迎えることが一般化し、これまで日常生活の一部であった死にゆく過程が医療の管理下におかれ、医療者以外の人々が死にゆく過程を身近に経験することがどんどん少なくなっていきました。そのため、死にゆく人にどのように寄り添えばよいか、また自分自身が死をどのように迎えれば良いかを学ぶ機会をもたない人が増え、宗教学者の島薗進さんがいう「自己や他者の死に直面しながら生きる経験」の希薄化が進んでしまいました。 社会学者の田代志門さんは「死にゆく過程を生きるー終末期がん患者の経験の社会学」(世界思想社、2016)のなかで、日本社会において高齢化が進展し多くの人に「遠くない将来に死を意識して生きる時間」が訪れることが、これまでにない「現代的な『死にゆく過程』の誕生」を引き起こしていると指摘しています。この田代さんがいう新たな「死にゆく過程」に応じたケアの実践を探るため、わたしたちは2012年から米国のジョアン・ハリファックス老師が作られた「Being with Dying (死にゆく人と共にあること)」プログラムを参考に、「伝統的な宗教の知恵が現代の日本人の宗教観に沿った形で表現され、実践される方法」を探る「死にゆく人と共にあること」プロジェクト(http://bwdj.org/)を進めています。 BWDプログラムでは、参加者は一緒に呼吸を観察したり、からだの中を観想する瞑想を行います。また、亡くなった後に自分の身体がどのように変化するかをイメージする瞑想などを通して、死を意識して生きることを学ぶとともに、亡くなる方が安らいだ状態でいられるようにサポートするにはどのように関われば良いかを体験的に理解します。 このBWDプログラムは8日間という長期に渡って行われるため、ハリファックス老師はそのエッセンスを脳科学や社会神経科学の成果と結びつけ、対人援助者のバーンアウト防止を目的とした3日間のGRACEプログラムを構築されました。2014年からウパヤ禅センターで提供されているGRACEプログラムは、仏教瞑想、臨床医学、臨床心理、ヨーガ、脳科学、生命倫理などを統合し医療者にとっても受け入れやすい形となっています。 わたしたちはまずこの短期で実践的なプログラムを日本の医療者に提供することにし、2015年からハリファックス老師らを招いて過去4回GRACEプログラムを開催してきました。その参加者が各地で勉強会を続けておられ、昨年12月には第1回日本GRACE研究会年次大会が昭和大学で開催されました。今年も第2回年次大会が恒藤暁大会長のもと12月6日に大阪で開催される予定です。詳細はホームページ(http://www.gracejapan.org/)でご案内いたしますので、ご関心のある方はぜひご参加頂ければと思います。 |
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ホスピス・緩和ケアフォーラ in 大分 が開催されました | ||||||||||||||||||
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第1回 日本グリーフ&ビリーブメント学会 学術大会 が開催されました | ||||||
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Whole Person Care ワークショップのご案内 | |||||
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ホスピス財団 第3回 国際セミナーのご案内 “マインドフルネスに基づく医療の実践” (逐次通訳付) | |||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・横浜・寿地区「簡宿街」に医師が回る独居老人の看取り 住民の約半数が65歳以上、大多数が生活保護受給者という寿地区に、15年以上も寄り添い訪問診療と看取りを行っている一人の医師をレポートした記事。 (Yahooニュース 2019/02/25 掲載) |
・NPO法人「がんサポートコミュニティ」がエクセレントNPO大賞を受賞 がん患者やその家族を心理的に支援している「がんサポートコミュニティ」の活動内容を紹介した記事。 "ここに来れば満たされる " と書かれているように、多くのがんと闘っている人たちがお互いに悩みを語り、励まし合うことの大切さが紹介されている。 (毎日新聞 2019/02/15 掲載) |
・病院での身体拘束をどう減らす 患者本位の医療を実現するために身体拘束を減らすことに関して3名の医療関係者に話を聞き、実現へ向けての提言を紹介した記事。石垣靖子氏は「身体拘束は現代医療が生んだ負の側面の象徴だ。治療の効率だけを優先し、人の幸せのためにある医療の本質を見失ってはいけない」と語られている。 (読売新聞 2019/02/14 掲載) |
・終末期の希望を家族で共有 みずほ情報総研が終末期の現状について調査したところ、終末期医療と延命について決めておくの必要と回答した人が半数以上であった。厚労省が推進する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の一層の普及が必要と提言されている。 (参考資料 厚労省はACPの愛称を「人生会議」とすることを決定) (読売新聞 2019/02/05 掲載) |
・がんの痛み抑制が終末期の課題 国立がん研究センターが、がん患者の遺族に痛みに関するアンケート調査を実施したが、患者の36%は痛みがあったとの回答があり、医療用麻薬の使用などをはじめ、緩和ケアによる適切な対応が必要であることを紹介した記事。 (読売新聞 2019/01/30 掲載) |
・元気なうちに家族で終活 本人がまだ元気な時に、将来に備えて終活を実施した経験者を取材した記事。娘と任意後見契約を結んだ父親、また遺言書の作成を支援する団体などが紹介されている。 (毎日新聞 2019/01/16 掲載) |
・特集記事「老いをどこで」 最終回 2回シリーズ 自分の最期を自宅や、住み慣れた地域迎えたい希望を持つ人が多い中、地域包括ケアという仕組み作りが進められている。地域との取り組みを実践しているNPO法人理事長の柴田範子氏にインタビューした記事(上) および、在宅介護を推進するためには、地域で中心となるプロデューサー的な人が必要であり、いわゆる互助組織の形成がカギとなることを提唱している識者にインタビューした記事。(下) (読売新聞 2019/12/24・25 連載) |
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