今月のコラム |
大阪大学
キャンパスライフ 健康支援センター 水田 一郎 |
青年期の心理療法・カウンセリングとホスピス・死生学 私はこれまでの職歴の中で、前半は大学病院の精神科で医師として青年期患者の治療(心理療法)にあたり、数年前からは同じ大学でカウンセラーとして学生相談に携わっています。一見、ホスピスとは無縁の世界であり、事実、ホスピスのことについては、一般の方がご存知であろう以上のことは何も知りません。 しかし、私の中では、個人的な意味においても、仕事を進める上でも、ホスピスや死生学の世界とは幾重ものご縁で結ばれている気がしています。私は母を9年前に亡くしましたが、最後は実家近くのホスピスで看取っていただきました。ひと月ほどの入院の間、身体的苦痛を最小限に抑えていただいたお陰で、最期まで、毎日僅かな時間でしたが、母と二人の会話の時間を持つことができた幸福は、今も心に強く残っています。 個人的な思い出といえば、今から20年以上も前、5年間の米国での留学から帰日し、着地点を探しあぐねていた頃、敬愛する柏木哲夫先生から、淀川キリスト教病院の精神科非常勤医として呼んでいただいたこともありがたい思い出です。早速、ホスピス病棟を見学させていただき、深い感銘を受けました。母が末期癌と分かった時、母も私もためらいなくホスピス治療を選んだのは、この時の感銘を、その後折に触れ、何度も母と私の間で話し合っていたからだと思います。 精神科医として、あるいはカウンセラーとして、病院に来る青年期精神科患者や学生相談に来る学生の話を聞いていていつも感じるのは、彼らの苦しみの多くには、ある共通点があるということです。それは「諦める」(喪失体験を受け容れる)ことの難しさです。また、この難しさに直面する不安から、本当は諦めなくてもよいのに(まだ何とかできるのに)、早々に努力を放棄してしまう青年もいます。このような青年に接する時、私の心には、平安の祈り(ニーバーの祈り)としてよく知られる祈りの一節が浮かんできます。 神様、私にお与えください 変えられないものを受け容れる平安を 変えられるものを変える勇気を そして、この二つを見つける賢さを 心理療法・カウンセリングとは、この祈りが叶うように、精神科医やカウンセラーが患者と共に祈り、患者を援助していくプロセスに他ならないように、私には思えます。(私は特定の宗教を信奉する宗教者ではないのですが。)人生において変えられないものは無数にありますが、その代表格が「喪失体験」であり、なかでも、最も明白でわかりすいものが「死」だと思います。自殺や自傷を考えたり、企図したり、事故に遭ったり、病気に罹ったりしない多くの青年にとって、身体的な「死」は彼らから最も遠いところにあります。しかし、彼らと言えども、外的・内的、現実的・象徴的なレベルでのさまざまな「喪失体験」(欲動、愛、依存、自己愛の対象を失う体験)を免れることはできません。人生は、彼らにとっても、さながら「喪失体験」の連続なのです。 この最後の点において、一見無関係に見える「青年期の心理療法・カウンセリング」と「ホスピス・死生学」は、本質的に深く結びついていると私は考えています。なぜなら、前者においてしばしば防衛的・回避的に幻想されるヴァーチャルな「死」、リセット可能な「死」が、後者の提供する厳粛でリアルな「死」によって対峙される時、そこには必ず、意味ある変化が生じざるを得ないと思うからです。両者を実質的に結びつける方法論について、現在模索しているところです。 |
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第9回グリーフ&ビリーブメント カンファレンスが開催されます | |||||||
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ホスピス財団 国際セミナーが、開催されました | |||||
今回のセミナーでは、2回のレクチャーの合間に参加者全員によるロールプレイが行われ、医療者が終末期における不確かな予後をどのように伝えるべきかを再度、考える機会が与えられ ました。 | |||||
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ELNEC-PPC(小児緩和ケアに携わる看護師指導者養成研修)が日本で初めて開催されました | |||
9月17日、18日、米国から2名の講師を招き、京都大学で開催され、全国から82名が参加されました。今回は指導者養成ということもあり、海外版モジュールでの研修でしたが、講義以外にも
ケーススタディやロールプレイも行われ参加者も積極的に取り組むことができました。 今後は日本語版ELNEC-PPCの開発が期待される有意義な研修会となりました。 |
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ホスピス財団ニュース 33号(2017年10月)が発行されました | |||||
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ホスピス・緩和ケア白書2017が刊行されました | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
新刊紹介 | ||||
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ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・名著「生きがいついて」著者である神谷美恵子の、人の生死を見据えた文章が今も読み続けられていることを紹介した記事
(読売新聞 2017/11/25 掲載) |
・がんの夫を自宅で看取った妻の回想と心境を紹介した、自宅でないと出来ない、心あたたまる介護と看取りを紹介した記事 (毎日新聞 2017/11/20 掲載) |
・2025年問題に象徴される「多死社会」に対して、横須賀市が取り組んでいる”自宅で最期を迎える”情報提供を紹介し、終末期での医療の意思決定が必要なことを提言した記事
(毎日新聞 2017/11/15 掲載) |
・シリーズ記事 「人生の最終章」 誰もがいつか、人生の最終章を迎える。人の数だけ最終章の物語がある。と取材した記者が最後に記している。延命治療をするかどうか、自宅での最期をどのように支えたらいいのか、ホームホスピスとはどのようなところか、など、厳しい現実を突きつけられた本人とその家族を取材した6回の特集記事 (読売新聞 2017/10月26日〜11月2日 連載) |
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