(公財)ホスピス財団 メールマガジン「今月のお便り」 vol.40
今月のコラム

 
高宮 有介氏
昭和大学医学部
医学教育学
高宮 有介
  2nd International Congress on Whole Person Careに参加して心に残ったこと

 2017年10月12日~15日に、カナダのモントリオールMcGill大学で開催された2nd International Congress on Whole Person Careに参加した。青空に緑が映え、気候も快適な時期であった。日本からは医師5名、作業療法士1名、僧侶1名の参加があった。
 Whole Person Careは、Curing(治癒)とともに、Healing(癒し)の重要性を提言している。Whole Person Care(ハッチンソン教授著)の日本語訳を、京都大学の恒藤暁先生が発刊し、わが国での認知が広がりつつあるが、さらに進んだ知見の集積の機会となった。
 キーワードにマインドフルネスがある。私は、2015年より、昭和大学の医療系学生に「マインドフルネスを活用したセルフケア教育」を実践しており、その内容をポスターで発表した。参加者からは、日本人はセルフ(自分自身)を優先して考えにくい傾向があるのでは、との問いがあった。まさにその通りである。ストレスも多く、修羅場も経験する医療者には、マインドフルネスは、特に必要だと再確認した。また、昭和大学の同僚である土屋静馬先生が「カナダと日本の緩和ケア医におけるレジリエンスの比較研究」を発表し、共同演者として同席した。土屋先生は、McGill大学に今年の7月まで2年間留学しており、今回の発表はその集大成とも言える。
 Healing(癒し)を議論する大会であったが、参加者への癒しにも細やかな気配りがあった。まず、毎朝、マインドフルネスのセッションが開催された。瞑想、音楽、作文があり、私は瞑想と音楽に参加した。瞑想は30分間のボディスキャンと参加者の交流があった。音楽は音楽療法士による歌やリラクゼーションが用意されていた(写真)。
 また、大会2日目の夜には、日本映画の「おくりびと」が上映された。以前に日本で観ていたが、今回はマインドフルな状態だったせいか、深く心に響き涙が止まらなかった。海外の方の心にも届いたようだ。上映後は、カナダが誇るワインとチーズが提供された。色を確かめ、香りを楽しみ、じっくりと観察した。最初は「早く飲ませてくれ」と心の中で叫んでいたが、しっかりと準備してからのマインドフルな一口は格別であった。翌朝、参加者全員が閉眼しての瞑想中、急にチェロの音色が会場に響いた。ハッチンソン教授のご配慮でチェロ奏者を招待したのだ。昨日のおくりびとで主演の本木君が弾いていた曲だった。その時の感動が甦った。
 今回の大会では、マインドフルネスを再確認した共に、その先にあるCompassion(慈悲、思いやり)についても示唆を頂いた。医療者、医療系の学生にマインドフルネスの教育を行っているが、Compassionを育む教育をしていくことを心に誓う機会にもなった。次回のWhole Person Care大会は、モントリオールMcGill大学の同じ会場で、2019年10月25日~27日に開催される。ホスピス・緩和ケアに関心を持つ皆様が参加することを願っている。

音楽療法士と共に癒しの時間
音楽療法士と共に癒しの時間
  ポスターの前で土屋静馬先生と
ポスターの前で土屋静馬先生と
  主催者のハッチンソン教授、京都大学の恒藤暁先生と共に
主催者のハッチンソン教授、京都大学の恒藤暁先生と共に
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ホスピス財団 国際セミナーが、東京・大阪で開催されます  ただいま申し込み受付中です
 
Gramling 先生による国際セミナーのチラシ  
・テーマ:Whole Person Careにおけるコミュニケーション力
・講師:Robelt Gramling先生 米国バーモント大学 緩和医療学部
・日時:2017年11月25日(土)26日(日)
 
 
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ホスピス財団ニュース 33号(2017年10月)が発行されました
 
ホスピス財団ニュース33号の表紙    左記写真は ホスピス財団ニュース33号の表紙です。


 
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中
 
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 「Whole Person Care:A New Paradigm for 21Century」(Springer 社 2011年)の日本語訳として『新たな全人的ケア:医療と教育のパラダイムシフト』を青海社より全国で発売中です。
 Whole Person Care とはカナダ、マギル大学医学部で開発された、新しいケアの概念であり、従来の考え方を根本的に変えるアプローチです。
 是非、ご一読ください。
 
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情報コーナー
 
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介
 
・食べて寝るだけで貴い
がんでステージ4と告知された人の心の痛みと、そのケアについて実際の体験者を取材して紹介し た記事
(毎日新聞 2017/10/25 掲載)

・自宅で最期を迎えることは、難しいと考えられがちですが、厚労省が取り組んでいる「在宅医療の体制構築に係わる指針」など地域での取り組みも進められていることを紹介した記事
(毎日新聞 2017/10/8 掲載)

・自宅で最期迎えることを支援するボランティア団体の活動を紹介した記事
(読売新聞 2017/9/29 夕刊掲載)

・ステージ4でも緩和ケア病棟に入るのが難しかった自らの体験から、緩和ケアを受けるための冊子を作成した前田さんを紹介した記事
(毎日新聞 2017/9/24 掲載)
(「がん患者のための緩和ケアの受け方」パンフレット)

・自宅で最期を迎えさせてあげたいとの思いから、奈良市で在宅ホスピス医としてクリニックを開設している森井医師を紹介した記事
(読売新聞 2017/9/19 掲載)

・末期がん患者の遺族に家族の問題についてアンケート調査を行った結果、家族間で意見の違いなど、課題が多いことがわかったことを紹介した記事
家族のケアも大切であることが示唆された。
(毎日新聞 2017/9/12 掲載)

・昨年、小児がんで16歳で亡くなった加藤 旭さんが作曲した曲が厚労省の自殺対策ソング(ゲートキーパーソング)「空の青いとり」として公開されたことを紹介した記事
(毎日新聞 2017/9/11 掲載)
「空の青いとり」は以下のサイトで聞くことができます。(加藤登紀子さんが歌っています)
 https://promotion.yahoo.co.jp/jisatsuyobou2017/song/

 
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