今月のコラム |
名古屋大学大学院
医学系研究科看護学専攻 佐藤 一樹 |
緩和ケアの質評価研究の最近の動向を紹介いたします。 医療の質評価は「どのような医療が提供されて(構造・プロセス)」「患者はどうであったか(アウトカム)」を評価して行います。WHOによる定義に緩和ケアは苦痛を緩和しQOLを改善するアプローチと明記されていますので、QOL(アウトカム)の評価が緩和ケアの質評価の主要評価項目と考えられます。QOLは多面的な概念で、対象によって構成要素が変わります。がん終末期では、日本人の「望ましい死」の構成要素をもとにQOLが評価されます。また、QOLの評価者は患者本人が本来ですが、終末期では全身状態や予後予測の問題のため患者評価は難しく、遺族による評価が採用されています。評価のものさしとして、遺族による緩和ケアの構造・プロセスの評価尺度(Care Evaluation Scale)、アウトカムの評価尺度(Good Death Inventory)がそれぞれ開発されています。 日本では、がん終末期での緩和ケアの質評価研究がこれまで系統的に行われてきました。「遺族によるホスピス・緩和ケアの質評価に関する研究(J-HOPE)」は過去3回定期的に行われた全国遺族調査で、ホスピス財団の研究事業でもあります。J-HOPEは系統的な調査方法・調査項目による質評価研究で国際的にも高く評価されています。しかし、課題もあります。J-HOPEの調査対象施設は日本ホスピス緩和ケア協会の会員施設である全国の緩和ケア病棟と一部の病院・診療所で、第1回調査のみ全国のがん診療連携拠点病院も含まれています。調査協力の得られた「一部の質の高い医療機関」での調査結果であり、全国のがん死亡者としての代表性は有していません。 海外では、死亡診断書を用いて死亡者を無作為抽出して行う遺族調査による質評価研究が行われています。この手法はすべての死亡者から調査対象者を抽出できるため、代表性の高い質評価が行えます。わが国でも、がん対策推進協議会での議論等を後押しとして、厚生労働省により人口動態調査を用いた全国遺族調査が現在計画されています。この調査によりこれまで調査対象となりにくかった中小規模の一般病院まで全国津々浦々の現状が把握できることとなります。調査結果を心待ちにしています。 |
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ホスピス財団 国際セミナーが、東京・大阪で開催されます | |||||||
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第2回 Whole Person Care 国際学会が、2017年10月にカナダ、モントリオールで開催されます | |||||
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ホスピス・緩和ケア白書2017が刊行されました | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 |
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・死を語り合う看護師・僧侶 看護師であるが、がんの夫を看取ったのを機に、高野山で5年の修行を終え、銀座のクリニックで 看護師長として、ガン患者と向き合っている人を紹介した記事 (毎日新聞 2017/8/23 掲載) |
・「鎮静」選択、難しい判断 末期がんの人の苦痛を和らげる目的で行う鎮静のメリットとデメリットを考慮しつつ、医師と患者家族で判断しなければならないという 課題を紹介した記事。また関連記事として恒藤 暁医師へのインタビューも紹介された。 (朝日新聞 & 朝日新聞 DIGITAL 2017/8/23 掲載) |
・QOD 生と死を問う 特集記事「終末期を支える」 2回シリーズ 重度であってもデイサービスを提供する施設を取材した記事と、介護施設での看取りが広がりつつある中で、その実例と人材育成が必要であることを問題提起した記事 (読売新聞 2017/8/20・27 掲載) |
・自宅で最期を迎える 多くの人が病院や介護施設で亡くなるが、自宅で最期を穏やかに迎えた例を紹介した記事。 「最期は自宅で」という本人の意思を尊重し、枯れるように死ぬということば通りの最期であった。 (毎日新聞 2017/8/16 掲載) |
・がん患者家族4割が葛藤 がん患者の家族が看病する中で、治療方針などに関して家族の間で意見の違いが生じ葛藤しているという課題を紹介した記事 (読売新聞 2017/8/13 掲載) |
・高齢者がん積極的治療回避 進行がんに対して、85歳以上の高齢者は積極的な治療を望まない割合が高くなるという、国立がん研究センターの調査結果を紹介した記事。合わせて、部位別の5年生存率も発表された。 (読売新聞 2017/8/9 掲載) |
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