今月のコラム |
筑波大学 医学医療系
浜野 淳 |
家庭医としてのEnd of life care
「人間の死亡率は100%である」 学生や聴衆が顔を上げることが多いフレーズである。諸外国を始め、日本でもホスピス・緩和ケア=がんというイメージが強いが、近年の研究では、がん・非がん疾患の終末期において、患者は疾患に関わらず様々な苦痛、症状を経験していることが明らかになっている。しかし、がん疾患患者の約2/3~3/4に緩和ケアが提供されているものの、非がん疾患患者においては約20%にしか緩和ケアが提供されていないとされている。 私は、いわゆる「ホームドクター」と言われる家庭医・総合診療医としての研鑽を積む中で、ホスピス・緩和ケアという世界に巡り合うことができた。そして、緩和ケア病棟で経験したことを生かして、家庭医・総合診療医として、在宅ホスピス、在宅緩和ケアに取り組む機会を頂いた。家庭医として、様々な人々の人生の一部分に関われることに大変感謝し、人生で一度しかない「旅立ちの時」に関わる責任感を感じている。 しかし、一方で、家庭医として自分が診療している外来を振り返った時、End of lifeのことを意識して関われているかというと、現実は異なるということも分かってきた。自分が診療所外来で関わっている65歳以上の患者さんのうち、1割前後の方は、End of lifeに関することを話し合うべきと考えられたが、実際に、話し合っていた患者は、ごく少数であった。家庭医としてのやりがい、責任感は感じつつも、人のEnd of lifeに関わっていくことの難しさがあることを実感している。 この難しさの根底にあるのは何なのだろうか?諸外国の研究では、家庭医は「先を見越したコミュニケーションをするタイミングが分からない」、「緩和ケアニーズを評価する知識、技術がない」と感じているとされているが、自分自身の感情としては、人生において、あまりにも大きなテーマである「死」と向き合うことの重大さに恐れ戦いているように思う。人生の一部分に関わることが医療者の使命ではあるが、自分自身は、疾患の医学的、科学的な点でしか関われていないことを改めて感じ、人生の一部分に関わることを気安く考えるべきではないと自戒する今日この頃である。 |
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ホスピス財団 国際セミナーが、東京・大阪で開催されます | |||||||
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Whole Person Care ワークショップ |
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第2回 Whole Person Care 国際学会が、2017年10月にカナダ、モントリオールで開催されます | |||||
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ホスピス財団の2017年度事業の紹介(4回シリーズ) その3 | |||||||||||
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ホスピス・緩和ケア白書2017が刊行されました | ||||||
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『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』 好評発売中 | ||||||
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情報コーナー |
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 |
・医療保険と介護保険が2018年に同時改訂されるが、2025年問題への対応について、医師会会長と
健保組合副会長が、それぞれコメントを記した記事
(毎日新聞 2017/6/28 掲載) |
・患者の気持ち・・・一番嫌いだったお見舞いのことばは「大丈夫?」これは病人には酷な問いかけ
であるとのこと (毎日新聞 2017/6/23 掲載) |
・第3期がん対策推進基本計画案(2017年~2022年)がまとめられたが、その骨子について
解説された記事。治療から予防、がんとの共生に力点が置かれている
(毎日新聞 2017/6/11 掲載) |
・自らも末期がんを克服した僧侶が、7月14日大阪の国立文楽劇場で、難病の子供たち支援するチャリティーコンサートが開催される記事。声明の世界を紹介し、またペルシャの伝統音楽との共演も企画されている
(毎日新聞 2017/6/9 掲載) |
・多死社会を迎えているが、「死んだらどうなる」という意識は多くの日本人が抱いている中、宗教哲学者の鎌田東二氏が、新著『日本人は死んだらどこへ行くのか』を上梓されたことを紹介した記事
(読売新聞 2017/6/8 夕刊掲載) |
・ドクター元ちゃんこと、西村元一先生が5月31日に他界されました。しかし生前に執筆されたシリーズ記事(ドクター元ちゃん、がんになる)が続けて掲載されています
(毎日新聞 2017/6/4 掲載) |
・シリーズ生と死を問う 第6部「今どきの終活」として、家財整理や、葬式、お墓の問題など
高齢化社会での生活設計について取材した特集記事
(読売新聞 2017/5/21・28、6/4 連載) |
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